小林社長は、次のように語る。

「いつも『夢』を持てと言っています。まず、それがなければ駄目です。しかし、次に夢を『ビジョン』に落とせ、そのビジョンを『戦略』に落とせ、戦略を『戦術』に落として実践しろと言っています」


小林社長は書類はあまり見ないが、説明をじっくり聞いたあと、次々に質問する。「リスクは最悪なんぼ?」「誰が経営するの?」「おまえ、自分の金だったらこの話に乗るか?」「現地の従業員はどう調達するの?」「法律上、問題はないのか?」「現地に行ったの?」等々。

本気のプレゼンなら、細かい質問にも明確な答えが即座に返ってくる。5分後に同じことを聞いてもブレがない。目が逃げない。つまり、単に夢を持っているだけでなく、それを実現するための具体的戦略、戦術まで考え抜いている。内容を自分自身で完全に消化しているから、どの角度から質問されても説明に齟齬やよどみが生じない。だからこそ、プレゼンに迫力が出るのだ。齋藤氏や江藤氏の場合が、まさにそうだった。

江藤氏の場合、「それで、僕には何をしてほしいの?」と問う小林部長に、「部長のチャンネルで帝国データバンクとNTTデータを紹介してください」と、具体的な要望が即座に返ってきた。

夢が机上の案ではなく現実の計画になっているかどうか――。小林社長がプレゼンターの目の中に見ているのは、それなのである。

(小山唯史=文 江木康人=撮影)