夢が机上の案ではなく現実の計画であるのか
その小林社長が最も印象に残っているプレゼンとして挙げるのが、現在カブドットコム証券の社長となっている齋藤正勝氏と出会ったときのことだ。1998年秋。当時32歳の齋藤氏は中堅証券会社を退職し、浪人しながら仲間6人と新しいタイプのネット証券を立ち上げようと苦闘していた。オンライン証券自体はすでに存在していたが、齋藤氏は既存企業のコピーではなく「自前のシステム」を持った会社に強くこだわっていた。
小林社長は言う。「僕がたまたま本社近くのイタリアン・レストランで飲んでいたら、齋藤さんが来られて、その計画をものすごく熱く熱く語った。その迫力に、『面白いから、明日、社にプレゼンにおいでよ』と伝えたのです」。
翌日、伊藤忠の社内で正式なプレゼンが行われたが、そのときも小林部長(当時・情報産業事業部長)は「企画書はあまり見ませんでしたね。顔を見ながら『これは、やらせてみようか』と思いました」という。こうして小林部長は齋藤氏らを伊藤忠の社員として採用、会社の立ち上げを任せた。「街で拾ったような若者にやらせた事業」(小林社長)だったが、05年3月、東証一部に企業上場させた(現在カブドットコム証券は、三菱UFJフィナンシャルグループ)。
昨春上場したイー・ギャランティの場合も、入社3年めの若手のプレゼンがスタートだった。00年のこと、小林部長とは異なる部門の若手が、理解者を求めて企画を持ち込んできた。
「売掛金保証サービスをする新事業という話だったのですが、僕としては、そういう分野があるのかという程度の理解。しかし、熱心に説明する若者の顔を見て、その迫力にゴーサインを出しました」(小林社長)という。その若者とは現在イー・ギャランティの江藤公則社長だ。
では、熱意さえあればいいのか?