三島さんはさらに意外な事実を教えてくれた。
「大切なのは、最初に深い徐波(じょは)睡眠が出て後半は浅くなっていく、メジャースリープ(まとまった睡眠)全体の構造を崩さないことです。短時間睡眠でも“深い眠り”は取れますが、問題は“浅い眠り”が取れないことなんです」
脳や体の疲れを取るには、「徐波睡眠」という深い睡眠だけではなく、睡眠の後半になって出てくる「浅(せん)睡眠」も必要なのだ。
徐波睡眠は眠ってから3時間以内に出る状態で、あとは時間とともに眠りが浅くなっていく。3~4時間しか眠らない寝不足の人でも、実は前半部分の徐波睡眠だけはしっかり取れている。しかしそれでは不十分だから寝不足と呼ばれるのである。
睡眠は脳だけでなく、筋肉や内臓にも必要だ。こちらはある程度眠らないと休めないため、浅い眠りを含めたまとまった睡眠時間が欠かせない。年齢によって必要な睡眠時間は異なるが、おおむね6~7時間、夜にしっかり眠ることで、血圧が下がり、糖代謝なども改善する。
実際、睡眠時間を削ると、わずか1日でも、筋肉や肝臓が血液中のブドウ糖を取り込むのに必要なインスリンの働きが弱まることが知られている。
「疫学的にも、短時間睡眠を長く続けると、糖尿病や高血圧といった生活習慣病にかかりやすくなることが分かっています」と三島さんは語る。
どうしても眠いときは仕事中に短い仮眠を
とはいえ、世界的に見てもジャパニーズ・ビジネスパーソンの生活は甘くない。仕事に追われて、十分な睡眠時間を確保できない人も多いだろう。そんなときは「1日1回の睡眠」にこだわっていられない。