期待できるのは、マスコミへの告発

私は08年2月、配転の無効と損害賠償を求め、会社と上司を提訴した。そこで気づいたのが、公益通報者保護法が「ザル法」だということ。企業は内部通報者を保護しなくても、罰せられない。だから、企業は内部通報者保護に緊張感がなくなる。しかも、内部通報者は具体的に犯罪や不正行為を明示しないと、保護対象にならない。

私は最終的には最高裁で勝訴した。だが、それは労働法で会社や上司の違法行為やパワハラが認定されたから。会社が定めた内部通報規定には、内部通報者の氏名などの守秘義務、不利益取り扱いの禁止などが明記されており、会社や上司の行為がその規定に違反すると判断されたのだ。公益通報者保護法は全くの機能不全であった。

公益通報者保護法が真剣に改正される動きは今のところなく、国が本気で内部通報者を守ろうとしているとは思えない。では、社内の犯罪や不正行為を知った場合、それを正すにはどうしたらいいのか? 公益通報者保護法は当てにはならない。行政に相談しても、効果は期待できないだろう。

そこで、安全度が高いのが新聞やテレビなどマスコミへの「正当な内部告発」。マスコミは、世論を動かす力を持っているし、「通報元」を厳重に秘匿する義務を負っている。しかし、何はともあれ、公益通報者保護法の実効力ある改正が急務である。

濱田正晴
オリンパス人事本部教育統括部チームリーダー
2007年4月に上司の不正に気づき、08年2月に提訴。12年6月に最高裁で濱田氏の勝訴が確定。16年2月、名誉回復訴訟で和解。
 
(構成=野澤正毅 撮影=石橋素幸)
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