「脳の断捨離」で、小分けにして捨てる

やらなければいけないことがたくさんあるとき、あるいはありそうに感じているとき、頭の中が混乱し、やる気がなくなったことがあると思います。どんな仕事でも単独の作業で完結するものはあまりなく、たいてい複数の作業から成り立っています。それらをステップに分け、ノートや付箋を使って、頭の中にあることをすべて文字に書き出して「見える化」するとクリアになります。

漠然と「やらなければいけないことがいろいろある」と思っているだけでは、不安になり、面倒くさくなってしまうもの。小さなステップに分解した後は、一つ一つのステップに集中して片づけていくだけです。

集中してやるべきことを次から次へと片づけるには、ワーキングメモリーがパンクしないように、自分が本当にやらなければいけないタスク以外は、捨てる意識を持つことも大事です。私は「脳の断捨離」と表現していますが、毎朝自分の様々なプロジェクトを見直して、今日やらなければいけないものをピックアップして、それを最優先でやるという、「セレクト集中」を行っています。

面倒くさくてなかなか取りかかれない作業でも、実際に作業時間を測ってみると、案外短かったりします。例えば、経費精算の処理で、「30分くらいかかりそうだなあ。イヤだなあ」と思っても、やってみれば、半分の15分で終わるかもしれません。作業時間を毎回測ることで、心理的時間と物理的時間にギャップがあることがわかり、心理的な認識のほうを変えていけます。すると面倒くさいと感じる作業でも、すぐに取りかかれるようになります。

目標時間を設定すると、さらに集中力が増します。何度も繰り返すようなルーティンであれば、毎回記録の更新を目指しましょう。自己ベストが出たら、それ自体がご褒美になります。

また、集中力を維持するには、時間を短く区切り、作業モードと休憩モードに分けるようにするとよいでしょう。時間の長さは人によって異なりますが、私は25分作業して、5分休憩する「ポモドーロ・テクニック」と呼ばれるリズムを実践しています。

重要なのは、25分でやることは1つに絞ること。あれもこれもやろうとすると、集中できなくなります。そのためには、取り組むべき作業を短い時間に分割するといいでしょう。

そして25分経ったら、作業の途中でもやめます。「もう少しやりたかった」と思うぐらいの時間で区切ることで、5分の休憩後もやる気を維持できますし、短時間で作業を切り上げることで脳の疲れがたまりにくくなります。休憩する際は、作業から1度離れ、頭をリセットしましょう。体を動かしたり、瞑想したりしてリラックスするといいですね。

もし25分で終わらなかった場合は、休憩後も同じ作業を続けたほうがいいでしょう。休憩時間にも脳が働いているため、頭の中が整理されて、作業開始後にいいアイデアが出てくる可能性があります。どんなに調子がよくても、5分の休憩をはさんだほうが効率的なのです。

森田敏宏
医師能力開発コンサルタント
東京大学医学部卒。医学博士。元東京大学医学部附属病院医師。メディカルインフォメーションジャパン代表取締役。心臓病の専門医として、東大病院の心臓カテーテル手術件数を10年間で50例から600例まで増やす。著書に『東大ドクター流やる気と集中力を引き出す技術』など多数。
 
(構成=吉田茂人 撮影=永井 浩)
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