日本で大勢のナルシシストが大量発生している

前掲の『自己愛過剰社会』によれば、アメリカがこういう社会になったのは、「自尊心をもち、自己表現や『自分を好きになること』ができる社会を築こうとするうちに、アメリカ人はうかつにも大勢のナルシシストを生み、さらに誰もが彼らに似た振る舞いをする文化を築いてしまった」からである。

写真=iStock.com/Alexandra Iakovleva

これはひとごとではない。アメリカをお手本にして自由な民主主義社会を築こうとした日本にもそのまま当てはまる。自尊心も、自己表現も、「自分を好きになること」も日本の教育が現在目指しているものにほかならず、それが結果的に大勢のナルシシストを生み出しても不思議ではない。

こうして生み出されたナルシシストは、SNS上で水を得た魚のようになる。というのも、SNS上で“受けがいい”のは次の3つの価値観だが、いずれもナルシシストと親和性が高いからだ。

1. いつでも楽しむものがあること
2. 消費者として成功を享受すること
3. 幸福とは魅力的な大人であること

▼見せびらかしを是とする「金科玉条」

この3つの価値観にもとづいて、見せびらかすように“リア充”自慢が繰り広げられる。楽しい旅行やイベント、すてきなレストランやカフェ、ブランドものの洋服やバッグ、魅力的なパートナーなどの写真を絶えずSNSに投稿する人は、この3つを金科玉条としているのではないか。

「インスタ映えのするスポットには大勢押し寄せる」という話を耳にすると、この3つの価値観にもとづいて行動するナルシシストがいかに多いかを痛感する。うがった見方をすれば、インスタ映えが流行語大賞に選ばれたこと自体、日本が「自己愛過剰社会」である証拠ともいえよう。