3メガ損保の一角を占めるSOMPOホールディングスが、デジタル変革を進めている。保険商品を開発・販売する会社から脱却、目指すは「安心・安全・健康のテーマパーク」。デジタル技術で新事業を育て、既存のビジネスシステムを一新し、「儲ける仕組み」を再構築する。デジタル変革の司令塔のCDOの楢崎浩一・常務執行役は何を語ったか。
SOMPOホールディングスのデジタル変革の司令塔、CDOの楢崎浩一・常務執行役。

率先して失敗してくれ。失敗したら褒めてやる

「安心・安全・健康のテーマパークを目指す」――SOMPOホールディングスのグループCEO社長の櫻田謙悟がここ数年いい続けてきた言葉だ。デジタルの進展で加速する顧客の変化を見据え、SOMPOホールディングスは保険の枠にとらわれない、「安心・安全・健康」の新しい事業領域を広げてきた。もちろん、3つのキーワードには損害保険会社のイメージは残る。だが、デジタル化の進展は、企業変革を待ったなしに促す。新たな競争環境を勝ち抜くために保険ビジネスを超えたチャレンジにほかならない。

そのアプローチの方法が、グループ全体での「デジタル・トランスフォーメーション」である。そして、デジタル戦略構築の“司令塔”の役割を務めるのが、グループCDO・常務執行役員の楢崎浩一だ。2016年5月、三菱商事を経て、アメリカで複数のIT系企業の設立と経営に携わったという経験を買われて、最高デジタル責任者に迎えられた。

そんな楢崎は「テーマパークはまだスタートしたばかりです。私は、それを推進するためのデジタルはツールだと考えています。いわば、当社がミッションを達成するためのランニングシューズのようなものです。それも、当社専用のものではなく、汎用性のあるプラットフォームをいち早く利用することによって、テーマパークの高みに登る。いま、一生懸命に努力しているところです」と話す。

動き出したばかりとはいうものの、すでに新セクションの立ち上げや米国のIT企業への出資など、矢継ぎ早に戦略的な動きを仕かけている。例えば「SOMPOデジタルラボ」だ。楢崎のCDO就任とほぼ同時に、東京本社とシリコンバレーに新設され、昨年11月にはイスラエルにも設置されている。東京のメンバーは、関連会社のSOMPOシステムズからの出向などの兼務者を含めて約50人。顧客調査や新ビジネス検討および試行展開が主な役割である。一方、シリコンバレーのほうは現地スタッフを含めて最新技術の研究と現地企業とのネットワーク構築を担う。

「調査・研究したとしてもものになるのは千三つ、1000回トライして、3回がせいぜいです。そうだとしても、いっぱい手数を打って、失敗してもそこから学んでいけばいいわけです。その下支えを私がする。社長の櫻田からも『率先して失敗してくれ。失敗したら褒めてやる』とまでいわれています」

大企業には減点主義のDNAがあるという。エリートになると失敗をしないし、失敗を許容しない企業風土も醸成されてくる。そして最後は失敗の仕方も分からなくなる。それを壊したいという櫻田の改革への本気度を示す言葉だ。