「昔は損保会社だったらしい」と言われたい

そのようにして楢崎が描くSOMPOホールディングスの未来形は、グループ全体がデジタルを含めてトランスフォーム、すなわち進化することだ。櫻田がよくいっている「昔は損保会社だったらしいといわれたい」との言葉が冗談ではなくなることが、企業変革の最終的な姿だという。グループ傘下には現在、国内損保、国内生保、介護・ヘルスケア、海外保険の4事業分野がある。だが、新規事業がそれらを凌駕していくことで「SOMPO」という社名自体が過去のものとなるかもしれない。

就任1年半を超えて、まもなく2年になろうとする楢崎だが、これまでの自己採点はデジタル化の進展度合いを含めて60点と控えめである。彼が「この2人のトップがいてこそ」と絶対の信頼を置く櫻田と西澤敬二(損害保険ジャパン日本興亜社長)の全面的なバックアップを受け、これからがいよいよ本番という認識なのだろう。今後、さらにスピードアップしていくことが予想される。

「経営資源といったとき、私はヒト・モノ・カネのほかに時間とデータが加わると考えています。いわば5資源ですね。このうち、人と組織はデジタル戦略にしたがって育成、改革していくしかありません。そのためにも、ラボのメンバーは失敗を経験しながら成長してほしい。そうすることで研究・開発のスピードを上げれば、限られた時間も有効的に使えるはずです。幸いSOMPOホールディングスは、長い歴史の上に人材と資産・資金には恵まれています」

この楢崎の言葉のように、活用できるデータの豊富さにおいても3大メガ損保の一角を占める優位性が生かせる。おそらくこれからは、より一層データの取得競争になると楢崎は読んでいる。なぜなら、グーグルやアマゾンの強みがデータ量に裏打ちされているからだ。CX(カスタマー・エクスペリエンス)を上げるためにもスピード化は不可欠であり、そこで後れをとることは絶対に許されないだけに、CDOの手腕が問われる。