「デジタル化は想像以上に進めるのが難しい」と、多くの関係者がコメントする。一方で、近年デジタル化を推進するために企業を揺り動かし、変革を実現するミッションを持つ最高デジタル責任者(CDO、Chief Digital Officer)を設置する動きは日本企業にも広がりつつある。Strategy&では、グローバルおよび、日本国内にてCDO調査を行い、考察を発表してきた(以下、CDOサーベイ)。日本企業のデジタル化のために取り組むべき課題と対応、CDOの役割について考えてみよう。(第1回/全3回)

横並びの変革は大きなリスクを内包

1.デジタル化の意味の取り違え

そもそもデジタル化とは何か、従来のIT化とはどう違うのだろうか。

デジタル化とは、デジタルによる事業環境や消費者・顧客のマインド、行動の変化に企業が対応するためのデジタルを活用した変革活動である。

膨大なデータが蓄積され、ハードの容量や処理スピードが拡大し、分析技術や人工知能の実用化が進み、個人、組織、機器までもネットワーク化し、互いにコミュニケーションし始め、これらの活用方法が決まりつつある。個別の技術や手法ではなく、これらを一体的に扱い、影響を考えることが必要であり、これこそがデジタル化の背景である。

従って、従来のIT化が技術導入であり、情報システム部などの機能部門内に閉じた活動が中心であったのに対し、デジタル化は部門横断的な業務プロセスの見直しや、顧客や取引先との関係性のあり方の見直しにまで踏み込んだ変革活動となる点も大きな特徴である。

2.日本企業はいまだに横並び思考

CDOサーベイ(日本)において、デジタル化を推進しているという企業回答者は88%にのぼる。一方で、デジタル化の推進の意向については、75%近くの企業が横並びあるいは、同業他社の状況を見つつ進める方向であると考えている。

最新技術の導入であれば、他企業が導入してその技術が有用か否かを見てから導入を決めるのも良かろう。しかし、環境や消費者の変化に対応するための変革が求められている中で、横並びの変革は大きなリスクを内包する。横を見ているうちに、新規参入企業や先進企業は、新しい市場やゲームのルールを作り出しつつある。

デジタル化の推進状況および、その推進姿勢