今までの常識は急速に非常識に変わる
3.今までの常識が非常識に
デジタルが及ぼす変化に対応するためには少々のカイゼンではなく、事業の行い方を抜本的に変える自己変革に取り組むことが求められる。今までの常識は、急速に非常識に変わる。
消費者・顧客のマインドと行動は既に大きく変化している。消費者は極めて多くの情報をモバイルやタブレットを通じて収集し、自ら情報を発信拡散している。個人や組織間の情報の流れがかつてない密度で活発化し、一人の消費者の体験が瞬く間に多くの消費者に共有される。その効果は、日本初のグローバルのヒットとして大きな経済効果につながることも、「炎上」という形で現れることもある。
消費者は店舗を訪問せずにモバイルを通じて購買できるようになり、さらに、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などの技術により一定の疑似体験をすることができる。情報の蓄積と分析技術の進展により、個々の消費者に向けてターゲットされた情報発信がされつつある。これらが、世界で起きている人口動態や富の分配の大きな変化の流れと相まって、製品・サービスの多様性がさらに求められるようになる。
企業は従来と全く異なる次元で、情報の流れを双方向に整え、柔軟にし、製造から商品、提供形態(商品かサービスか)、メッセージまで、個々人を理解し想定したものとすることが必要となる。
企業の事業運営の効率化も大きく拡大する。建設工事や生産現場などのみではなく、いわゆるオフィスワークでも自動化や省力化が可能となる。これは、日本の労働力不足の抜本的な解決策となる一方で、単純な生産活動に対する価値が薄れることも意味する。また、膨大なデータを収集し、高速で分析し、迅速かつ的確に判断できる環境も整いつつある。従来は、生産や事務処理の正確性と均質性を人が担保していたため、その労働力の質や規模が優位性の根源(または弱点)となり、競争力の差が生じていた。しかしこれからは、この日本のお家芸とも言えるような優位性は、自動化により意味を持たなくなる。
また同時に、単純に見えても細かな繊細な作業に差がでる感覚や経験を要求する生産工程や、事務や営業などの各プロセスにおける属人性の高いノウハウにおいても、「匠の技」を新人でも行えるようにガイダンスとして提供することも、さらには自動化して再現することも可能となる。従来はやりたくてもできなかった新しいカイゼンの可能性も、技術が発展し環境が整うために可能になっていく。先行する企業がこの取り組みを加速させていけば、市場全体ででもスピード感やコスト水準などの事業環境が大きく変化する。