自分が今、置かれた場所を安心して受け入れよ

『考証・西郷隆盛の正体』(城島明彦著・カンゼン刊)
◇今の境遇を目いっぱい楽しむことだ

人が人生の間にぶつかる場面は、実にさまざまである。険しいときもあれば、平坦なときもある。穏やかな流れもあれば。怒涛の波もある。けれど、それらは自然なめぐり合わせなので、避けて通ることは不可能だ。それらは「易」の道理で説明がつく。だから、自分が今、置かれた場所を安心して受け入れ、思う存分に楽しんだらいいのだ。焦って回避したりするのは、達人のやるべきことではない。(『言志後録』25)

 
〔解説〕人生は紆余曲折。楽あれば苦もあり、苦あれば楽もある。悲観的にとらえないこと。
◇克己心が大事

濁った水も水に変わりがない。ひとたび澄めば、清らかな水になるではないか。空(から)元気も気に変わりはない。うまくいけば、生気に変わるではないか。空元気を駆逐する工夫は、自分に克てるかどうかの一点にかかっている。そういうときは、「礼」をわきまえた生き方をするように心がけることだ。(『言志晩録』17)

〔解説〕他人に優しく、自分には厳しくが理想だ。欲もあれば誘惑もある。自分に克つ心がけと努力を積めば、大きな人間になれる。
◇若いうちに勉強せよ

朝食を抜くと、昼になって空腹を感じる。それと同じで、若いうちにしっかり学ばないと、壮年になってから、あれこれ惑うようになる。空腹は我慢できようが、学問不足はどうにもならない。(『言志テツ録』140)

〔解説〕「鉄は熱いうちに打て」という諺もある。年老いると、気力も体力も記憶力も落ちる。頭も体も若いうちに鍛えるのが一番なのだ。
◇近道には落とし穴がある

遠方へ歩いていこうとするとき、しばしば正しい道を行かずに近道を選んだつもりで、誤って草木が生い茂ったところへ足を踏み入れるのは、笑止である。(『言志テツ録』266)

〔解説〕うまい話には裏があり、近道には落とし穴がある。苦しくても辛くても、真っ直ぐな生き方をしていれば、必ず誰かが見ている。そしていつか、必ず大きく花開くときが来る。
城島明彦(じょうじま・あきひこ)
作家・ジャーナリスト
1946年、三重県生まれ。早稲田大学政経学部卒。東宝、ソニー勤務を経て、短編小説「けさらんぱさらん」で文藝春秋の「オール讀物新人賞」、作家となる。著書は『「世界の大富豪」成功の法則』『宮本武蔵「五輪書」』『吉田松陰「留魂録」』『広報がダメだから社長が謝罪会見をする』『ソニーを踏み台にした男たち』『恐怖がたり42夜』など多数。近著に『考証・西郷隆盛の正体』『中江藤樹「翁問答」』がある。
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