2018年のNHK大河ドラマは『西郷どん』です。主人公の西郷隆盛を、一方的に命令を下すのではなく、周りをサポートすることに徹したリーダーととらえるとその魅力に気がつきます。こうしたリーダーのあり方を「サーバント(下僕)・リーダーシップ」といいます。そのポイントはどこか。人材開発のプロが解説します。(中編、全3回)

リーダーシップを不意に求められたら……

好き嫌いにかかわらず、リーダーシップを「発揮せざるを得ない」状況というのはあるものです。要因は出世や昇進だけではありません。子供の学校でPTAの役員を任された、マンションの管理組合で理事長に選ばれた、ということもあるでしょう。

そんなとき、リーダーらしく堂々と振る舞えないと、周りからは「せっかく任せたのにがっかり」「リーダーの器じゃない」などと厳しく評価されてしまいます。「任せたそっちが悪いんだろう」と言いたくなりますが、グッと飲み込んで悔しい思いをかみしめる――。そんな経験をもつ人もいると思います。

そんな方に紹介したいのが「サーバント・リーダーシップ」です。「サーバント(servant)」とは英語で「しもべ (下僕)」を意味します。リーダーとサーバントでは正反対のように思うかもしれませんが、実はそうではないのです。

「下僕(しもべ)」のリーダーシップとは?

一般的な会社の「組織図」はピラミッド型です。頂点が社長でその指揮を受けるのが役員。そのまた下に部長がいて……と、階層が下がるほど人数が多くなるので、形としては三角形に見えます。この組織の上部にいる人が発揮するのがリーダーシップ。配下の多くの人に命令を下し組織を率いる、いわば「力強いリーダー」というイメージでしょう。

ところが、それ「だけ」がリーダーシップではない、というのが米国を中心に発展してきたリーダーシップ理論の発見です。なぜならば、リーダーシップにはさまざまな形があるからです。これを私は「リーダーシップは試着できる」と説明しています(前回記事:管理職とリーダーの「決定的な違い」とは)。

組織図の話に戻りましょう。サーバント・リーダーシップでは、従来の組織図を逆転して逆三角形で考えます。つまり、会社の業績を上げる原動力は、逆三角形の上にいる現場の社員であるとの発想です。したがってリーダーの役割は、「組織の中の人びとを助ける」、つまり現場の人が業績を上げるのをサポートすることになります。日本風に言うならば、縁の下の力持ちのような位置づけでしょうか。