預金平均残高を利払いで割ると、おおよその預金金利が算出でき、1.1~1.2%で資金調達を行っていることがわかる。貸出金利息を貸出金平均残高で割ると、貸出金利は2.59%だ。

1.1~1.2%で資金を調達し、2.59%で貸せば、なんとか経営は成り立つ。しかし前述のように十分な貸し出しはできていない。

だぶついた資金の行方を追うべく財務諸表を見ると、有価証券で運用されていることがわかる。その運用益を計算すると、約1.1%。資金(預金)の調達金利とほぼ同じ程度の運用利回りしか得ていない。結果、経費分はまるまる赤字になる、というわけだ。

そもそも新銀行東京は、バブル崩壊によって生じた不良債権問題により、貸し渋り、貸し剥がしにあっていた中小企業、ベンチャー企業を支援するという目的で設立された。にもかかわらず、十分に貸し出しが行われていない、つまり本来の目的を果たしていないといっていい。

新銀行東京の設立が検討され始めた2001年当時は、日経平均が1万円を割り込むなど、金融不安の真っ只中であったが、実際に設立されたのは05年4月で、その頃には貸し渋りも解消されつつあった。このタイムラグも、貸し出しが低迷することになった要因だ。そもそも中小企業やベンチャーの融資審査は難しく、また私はお金を貸すという業務においては審査より取り立てが重要だと考えている。公的機関の性質にはそぐわない業務なのだ。

利益が生まれないということは、市場がダメを出しているに等しい。立ち直るには痛みを感じ、覚醒し、知恵を絞る必要がある。追加出資で当面の痛みが和らぎ、覚醒が遅れなければいいのだが。

(高橋晴美=構成 ライヴ・アート=図版作成)