大胆な改革にはリーダーシップが必要

――ベイン・アンド・カンパニーとプレジデント社が共同で行った日本での調査によると、日本企業は「適材適所」という面でグローバル企業に大きく差がついており、また、「不満層」の多さも目立ちます。その背景にあるのが「社内流動性の低さ」ではないかと分析されていますね。

人は自分の能力に見合った機会を与えられていないときに不満を感じるものです。とくに能力の高い人は自分の力をフルに発揮できない環境に置かれたときにフラストレーションを感じます。一方で、能力を発揮できる仕事をしていても、同じ部門で同じような仕事を長くやっていると停滞していきます。彼らのスキルアップのためには新しい環境でより高い目標を目指すことによる「ストレッチ」が必要なのです。

人材の流動性、任期、ローテーション、従業員満足度などは相互に関連しています。ひとつのポジションにおける任期の長いピラミッド型の組織では、人材のローテーションが緩慢になります。優良企業はよりアジャイルなチームベースのフラットな組織への変革を遂げています。それによって、20~30%少ない人員で同じ成果が出せるようになり、そのぶん新しい業務に人を振り向けることが可能になります。ING(欧州の総合金融グループ)やANZ(オーストラリア・ニュージーランド銀行)などのグローバルな巨大企業も仕事のプロセスを改革することでITベンチャーのようなアジャイルな企業に生まれ変わりました。

わたしは今回の来日でリクルートの話を聞く機会がありました。リクルートは2012年にアメリカの求人サイト、インディードを買収しましたが、日本で優秀なエンジニアを採用するために、彼らが憧れるような突出したエンジニアを本国から呼び寄せたそうです。リクルートの場合はベンチャーの買収によって自社の文化をよりアジャイルな、ミレニアル文化に親和性のあるものに変革しつつあるように見えます。リクルートに限らず、日本でも上位25%の優良企業は、人材の活用という面で最も優秀なグローバル企業にひけをとりません。日本の企業が自国のトップランナーたちから学べることはたくさんあると思います。

――といっても大企業がベンチャーのような会社に生まれ変わるのは簡単なことではないと思います。

たしかにそうです。企業が独占的な力を持っている場合はとくに変わるのは難しい。しかし、その独占がいったん崩れると変わらざるを得ません。マイクロソフトがよい例です。彼らが何をしたかというとデジタルネイティブの会社を買収し、彼らを支配しようとしなかったばかりか、彼らに「学ぶ」という姿勢で大事なプロジェクトをどんどん任せました。それによって生まれ変わったのです。こうした大胆な改革にはリーダーシップが必要です。日本の企業が直面している問題の数々は、労働人口の問題でもありますが、リーダーシップの問題でもあるのです。

エリック・ガートン
ベイン・アンド・カンパニー パートナー。シカゴオフィスでグローバルの組織プラクティスのリーダーを務める。約20年にわたり、組織デザインや企業統合、コスト削減等のプロジェクトを手掛けている。2017年、マイケル・マンキンスと共著で『Time Talent Energy』をHarvard Business Review Press(日本語版はプレジデント社)より刊行。
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(取材・構成=プレジデント書籍編集部 撮影=皆木優子)