日本企業の意欲の水準は危機的レベル?
この連載ではこれまで、組織の生産力を最大化するための鍵となる3つの要素のうち「時間(Time)」「人材(Talent)」について論じてきた。最終回となる今回は第3の要素である「Energy(意欲)」について掘り下げていきたい。
ここで言う「意欲」とは、社員が自分の仕事にどれだけ当事者意識を持って主体的に取り組めているかを示している。ここでは、社員を意欲レベルに応じて「不満層」「満足層」「当事者意識のある層」「やる気溢れる層」の4階層に分類する。
「やる気溢れる」社員は、ただ単に「満足している」社員に比べて実に2.3倍ものパフォーマンスを発揮し、さらに、「当事者意識のある」社員よりも90%以上生産性が高いことが私たちの調査で明らかになっている(図1)。それだけではなく、こうした社員の意欲が周りの同僚にも伝播し、さらなる相乗効果を生むこともわかっている。企業としては、どうやってこうしたやる気溢れる社員を増やし、つなぎとめ、活用するかが非常に重要なのは言うまでもない。一方、会社・職場に満足していない不満層は、生産性が低いばかりか職場に対してネガティブなコメントを発し、周りの同僚や社外にも負の影響を与える存在となりかねない。
ところで、読者のなかには以下のようなイメージをお持ちの方も多いのではないか。「海外の企業は社員が定着せず流動性が高い。社員はドライで、会社に対するロイヤリティが低い。一方、日本企業の社員は帰属意識が強く、会社のために身を粉にして働く人が多い」。
実はこうしたイメージは、実態とは大きくかけ離れていることが今回プレジデントとベインの共同調査により明らかになった。日本企業はグローバル企業と比較して「職場に対して不満を感じている」社員の割合が圧倒的に多いのだ。特に、組織生産力の高い上位25%の優良企業を除いたそれ以外の企業では、実に3人に1人が職場に不満を抱いている(図2)。グローバル企業の調査では、不満層は10人に1人であったことを考えると非常に高いといえるだろう。