組織のミッションと社員の仕事を結びつける

では、うまく社員のやる気を引き出し、奮い立たせるにはどうすればよいのか。社員のやる気の創出に成功している会社、組織に共通する特徴の一つとして、会社・組織のビジョンを明確に示せていることが挙げられる。

例えば、NPO法人は、明確な社会的意義を掲げて事業を運営しているケースが多い。こうした組織のビジョンが従業員の強い共感を呼び、従業員はビジョンの実現のためにやる気に溢れて働くのだ。

金銭的な動機付けはもちろん重要な一要素であるが、それだけで社員がやる気に溢れることはない。会社が明確な社会的意義やビジョンを持ち、それが自身の日々の仕事と結びついて初めて、社員はやる気に溢れて仕事に取り組むようになるのである。

B2C企業やサービス企業では、比較的社員の意欲が高い傾向が見られたが、これも現場の社員が目の前の顧客と日々接し、自身の仕事の顧客への価値を実感する機会が多いことによる部分が大きいのではないか。逆に、不祥事の際にトップが不誠実な対応をすれば、社員の意欲に大きな影を落としかねない。

部下のモチベーションを高めるリーダーシップに関しては、部下の「褒め方」から「叱り方」に至るまでさまざまな記事が溢れているが、こうした管理職一人ひとりの意識改革や取り組みだけで会社を変えていくには限界があり、やはり組織的な取り組みが欠かせない。

まずは、会社としての将来のビジョン、譲れない価値観と、それに基づく明確な会社の成長戦略を示すことが第一歩である。社員は、上司や経営陣の姿をシビアに見ている。将来の見えない組織には誰もついてこないし、ましてそんな会社のために、やる気を奮い立たせて働いてくれるわけもない。読者の会社のビジョンは社員の意欲を刺激するに足るだろうか。自問してみてほしい。

次に、ビジョンを社員一人ひとりにコミュニケーションし、各人の日々の仕事がそのビジョンの達成にどう貢献しているのかを語りかけていくことが重要である。そこには経営陣および現場のリーダーシップが欠かせない。小手先ではなく、こうした企業の価値観、および文化の浸透が、社員一人ひとりの仕事に対するやりがいにつながり、社員の心に火をつけ、やる気を奮い立たせるのである。

組織生産性の向上は、個々人の「働き方改革」だけではどうにもならない。まさに「時間」「人材」「意欲」という希少資源のマネジメントこそが競争力となる差を生むのである。

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