『孫子』の言う「先ずその愛する所を奪え」とは
次にリストラを発表する前に、会社に残ってほしい人材と個別面談をして、会社の実情と、今後会社が何を目指していくかといった未来の展望を話しておく必要があります。会社を引っ張っていってもらわなければいけない人間を味方に引き込んでおく。
言い方は悪いですが現場を分断して、優秀な人たちが会社の味方になるような流れをつくってしまう。『孫子』の言う先ずその愛する所を奪えです。事前の根回しもなしに一律平等に情報を伝えてしまうと、リストラ反対運動など、会社にとってマイナスの方向で団結する可能性が高くなります。
実情を広くきちんと伝えるのはその後です。「最終的には、申し訳ないけれど現場の何人かが別の会社を目指してもらうことになる」と伝えたうえで、辞めてもらう人とも段階的に面談をして、物事の幕引きを図るという流れです。
さらに加えるなら、実際に去ってもらう人間と面談するときには、現場が感じている会社の問題点、改善方法を言ってもらう。つまり現場にも発言の機会をつくることです。『常々思っていたことを伝えることができた。去ることになるが、今後の会社の改善に繋がるかもしれない』という気持ちにさせることです。
強引なリストラは現場のやる気をなくしますし、こんな会社で働いていていいのだろうかと不安にもなります。
『孫子』は目の前の勝ちだけでなく、最終的な勝利を手にすることこそが大事だと説いています。人員削減がゴールではなく、仲間がリストラされてしまった厳しい状況でありながらも、業績改善の意欲が逆に高まるような状況を現場につくり出すことこそ本当の勝利です
(構成=遠藤 成)