「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という格言がある。賢き先人たちは、古典の知恵に学び、ピンチを切り抜けてきた。雑誌「プレジデント」(2017年5月29日号)では、戦略書の古典「孫子」の特集を組んだ。今回は特集から、経営戦略コンサルタントの鈴木博毅氏による「リストラ」についての考察を紹介しよう――。

説得の武器をくれるよう依頼してみるべき

Q.社員のリストラを会社から命じられた。これまでずっと苦楽をともにしてきた仲間の悲鳴が聞こえてくる。全員を集めて伝えるべきか、残ってほしい人にまず伝えるべきか。

A.鈴木博毅さんの回答

上と下の板挟みになる。管理職にはよくある悩みです。しかもリストラとなると、誰も進んではやりたがらない嫌な仕事です。

あなたが非常に優秀で、会社に残れることが確実で、職場の仲間を傷つけたくないというのであれば、そんな役目を引き受ける必要はないかもしれません。逆に会社を見切って自分から辞めるという選択もあるでしょう。

ただ、あなたが断っても誰かがやります。それは強引なクビ切りで、職場がズタズタになるかもしれません。それならば、会社を辞めるにしても、辛いですが自分の手でリストラを完遂させてから去るほうがいいのではないでしょうか。経験は個人的キャリアアップにも繋がります。

では、どう進めるか。まず、引き受けるにあたり、現場の説得材料として、上層部もコストカットのために血を流し苦しんでいることがわかるような情報が欲しいと会社の上層部に提案すべきです。上層部も血を流し、必死に取り組んでいる形もないまま、現場だけが泣くというのでは、感情的な齟齬が大きく、説得は難しくなります。上層部の感情を損ねない範囲で、説得の武器をくれるよう依頼してみるべきでしょう。