(1)は、主として発展途上国の石炭火力発電所を対象にしたものであり、技術者間の交流等を通じたベストプラクティスの国際的な水平展開(いわゆる「ピア・レビュー活動」)がカギを握る。

(2)は、今後建設される火力発電所に、その時点で最高のエネルギー効率向上技術(BAT=Best Available Techno-logy)を導入するものであり、発電部門の「トップ・ランナー方式」と呼びうるものである。

(3)は、石炭ガス化複合発電(IGCC)やCO2の回収・貯留(CCS)などを推進するものであり、(3)によるCO2排出量削減効果は、きわめて大きい。

日本の電力会社は、(1)および(2)で国際的なリーダーシップを発揮するとともに、(3)にも力を入れている。

10カ国で排出量を2.5億トン削減する日本鉄鋼業の技術

図2

図2

図2は、日本の鉄鋼業におけるエネルギー効率を世界各国の鉄鋼業が達成できたとすれば、どの程度のCO2排出量削減が可能になるかを、国別にみたものである。そのような状況が実現すれば、中国・アメリカ・ロシアを中心にCO2排出量が大幅に削減され、図2に登場する10カ国のCO2排出削減可能量の合計は、2.5億トンに及ぶのである。

日本の鉄鋼業は、1970年代の石油危機以降、工程の省略や連続化、副生ガスの回収と有効利用、大型廃熱回収設備の導入と増強、非微粘炭使用比率の拡大、資源のリサイクルなどによって、世界最高水準の省エネルギーを実現してきた。

その結果、一貫製鉄所のエネルギー効率(石油トン/粗鋼トン)を比較すると、日本が0.59にとどまるのに対して、アメリカは0.74、カナダは0.75、イギリスは0.72、フランスは0.71、ドイツは0.69、オーストラリアは0.79、韓国は0.63、中国は0.76、インドは0.78、ロシアは0.80となる(08年のRITE調べ)。

このような格差が存在するため、日本鉄鋼業の現在のエネルギー効率を国際的に水平展開するだけで、図2のようなCO2排出量の削減が可能になるのである。

鉄鋼業界におけるセクター別アプローチが取り上げるのは、もちろん、既存技術の普及だけにとどまるものではない。CO2の回収・貯留、水素の製造・利用、電気精錬など、ブレークスルーな技術の開発と導入も含まれる。日本の鉄鋼各社は、このうちCCS技術と水素技術の開発に力を入れている。