荒唐無稽とも言える物語である。
伊集院 静●いじゅういん・しずか 1950年、山口県生まれ。CMディレクター、作詞家などを経て、81年「皐月」で作家デビュー。91年『乳房』で吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で直木賞受賞。野球やギャンブルにも精通し、無頼なエッセイも人気だ。
少年時代に朝鮮半島から体ひとつで海を渡ってきた“お父やん”は、日本の地で懸命に働き、家族をもうける。戦後は興した事業も順調だったが、待望の男子“僕”が生まれたその年、朝鮮戦争が勃発する。戦火の故郷には、愛する妻の家族がいる。日本帰りで左翼思想を持つ義弟“オジさん”は、鶏小屋下の穴蔵で隠遁生活を強いられているという。泣き崩れる妻に、お父やんは一言「心配するな。何とかしてみよう」と言い残し、哨戒艇ひしめく海を再び半島へと向かっていく……。
現代を生きる我々にとって、にわかには信じがたいこの壮絶な救出劇は、驚いたことに、伊集院氏の家族に起こった“奇跡のような真実”の物語なのだ。
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(kuma*=撮影)


