結論が出ているのに粘るのは逆効果

契約の最終段階になっても情報が取れないことが多くの営業担当者の課題だが、その解決策は「最悪の事態は常に起こりうる」という意識を持って継続的に相手に確認していくことしかない。

「スケジュール通り進めるうえでネックになりそうな要因には何があるか」「プロジェクトが止まるとしたら何が原因になりそうか」等をあらかじめ顧客に聞いておく。そうすると商談の最終段階になって「懸念事項がいくつかありましたが、いかがでしょうか?」と聞くことができる。

案件の延期や中止は顧客の都合であり、そうした事態は避けられない。しかし、その情報をできる限り早く取ることは可能だ。

会社としても当月末にいきなり「やっぱりダメでした」と言われたらどうしようもないが、数カ月前に「危なそうです」と言われていれば何らかの手が打てる。

また、ギリギリで案件を延期にされると少なからぬ営業担当者が「契約を取れなくて上司から怒られた」と恨みを持ち訪問をやめてしまうが、これほどの愚行はない。半年ぐらい経って再び訪問してみると、すでに競合他社と契約を結んでいたということがあるからだ。

案件が延期や中止になると自分も落胆するが、顧客の担当者も落胆しているもの。個人向けの営業でも、たとえば新車を購入しようとしていたのに給与カットがあって購入できなかった場合、その落ち込みようは想像に難くない。そんなときは、再び買えるようになるときに向けて準備を一緒にしておく。

「今回は残念ですが、また買えるようになったときにすぐ動けるようにしておきましょう。モデルチェンジ等の情報が出たら、こちらからご連絡いたします」

関係をつないでおけば、継続的なアプローチが可能になる。案件が中止になったときは顧客のほうが気まずくなり、「もうあの営業担当者には連絡しにくいな……」という雰囲気になりがちだが、こういうときこそ営業担当者は感情移入を働かせ、そう思わせないことが大切である。

延期や中止の結論がもう出ているのに、強引に粘ったり担当者を責めたりする営業担当者を見かけるが、これは逆効果だ。せっかく構築した関係をわざわざ壊すことはない。

そんな時間があったら少ない予算で実施可能な提案を行い、顧客のメリットを最優先している姿勢を示そう。どんな局面でも顧客の立場に立って考え、前向きに頭を切り替えていくことだ。

(構成=宮内 健 市来朋久=撮影)