長男の「お金を稼ぎたい」という希望はかなうのか?

最後は、長男の「自分もお金を稼ぎたい」という希望をかなえるための支援制度です。

【就労継続支援】

長男は就労も検討したいとのことでした。しかし、高校を中退した後、就労の経験がほとんどないため自信がないとも言っていました。そのような場合、「就労継続支援」を受けることも検討してみるとよいでしょう。

就労継続支援は、通常の会社に雇用されることが困難な障害者に対して、就労の機会を提供し、その仕事で求められる知識や能力の向上のために必要な訓練を行うものです。雇用契約を結び利用する「A型」と、雇用契約を結ばないで利用する「B型」の2種類があります。一部実費がかかることもありますが、原則として無料です。

就労継続支援B型では、軽作業を通して働くための体力作りやスキルを身につけていきます。事業所でご本人の体力や体調を考慮してもらえるので、例えば1日2~3時間、週2~3日から始めたい、というような希望を伝えるとよいでしょう。給料は工賃という形で出ますが、昼食代や施設利用料などで相殺されるケースがほとんどです。

一方A型は、B型に比べて作業時間や日数がやや多めに設定されています。事業所と雇用契約を結ぶ形で働くことになりますので、雇用条件を守って働くことが求められます。仕事内容は、パソコンを使ったデータ入力やデザイン作業、お弁当の製造、販売、宅配作業、製品の梱包作業など、B型に比べて少し複雑です。給料は働く時間や日数によりますが、月5万~7万円ほどになります。

就労継続支援は国と自治体の税金で賄っているため、支援を受けるためには公的な手続きが必要です。就労継続支援の相談・手続き先は、住所地の市区町村の担当窓口(障害福祉課など)になります。

▼就業、就学していない30歳未満のニートは170万人

OECD(経済協力開発機構)が今春発表した報告書『若者への投資:日本 - OECDニートレビュー』によると、日本におけるニート(15~29歳で就業、就学、職業訓練のいずれも行っていない)の人数は2015年で170万人でした。これは30歳未満の10.1%におよびます。

そして報告書が「深刻な問題」と指摘しているのが、「30歳未満の約1.8%(32万人)が、ひきこもり状態にある」という点です。ニートがそのままひきこもりになるとは限りませんが、何らかの原因で、一生涯にわたり経済的自立ができなくなるケースは少なくないのです。

その意味で、潜在的なひきこもり予備軍といわれるニートを抱える家庭は、万が一に備え、私がIさんの家族に伝えたような「支援制度」についての知識を備えておくべきでしょう。

さまざまな支援制度について伝えたところ、心の中のモヤモヤが少し晴れたのか、Iさん一家の表情もだいぶ柔らかくなってきました。でもここからが本番。ご長男のサバイバルプランの作成です。

後編に続きます。

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