奨学金の「借金」は4年間で576万円にもなる

返済が必要な奨学金は「貸与」だ。日本学生支援機構の貸与奨学金(二種)は月額で最大12万円。1年間では144万円、4年間では576万円にもなる。さらに大学によっては独自に貸与奨学金を用意していることがある。こちらは年額20万円~80万円が相場だ。

奨学金といっても、「貸与」であれば返済しなければいけない。この学生の両親は、すでに借金を重ねていて、新たな借金ができないのだろうか。親に仕送りをした結果、卒業後に返済義務を背負うことになるのは、子供のほうだ。これでは借金をするために、東京の大学へ進学しているようなものだろう。

文部科学省によると、今年の大学進学率は昨年を0.6ポイント上回り、過去最高の52.6%だった。一方で、大学進学のための経済問題は深刻さを増している。

奨学金は低利で借りられるとはいえ、借金を抱えて大学を卒業すれば、奨学金が新たな貧困の原因になることもある。教育費をだれがどれだけ負担するべきなのか。あらためて議論が必要ではないだろうか。

安田賢治(やすだ・けんじ)
大学通信 常務取締役
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。大学通信入社。30数年にわたって、大学をはじめとするさまざまな教育関連の情報を、書籍・情報誌を通じて発信してきた。現在、常務取締役、情報調査・編集部ゼネラルマネージャー。大正大学講師。著書に『中学受験のひみつ』『笑うに笑えない大学の惨状』など。近著に『教育費破産』がある。
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