「教育費」の負担が社会を分断しはじめている。高校では、経済力のある人たちが「併願」で難関大学に進む一方、そうでない家庭は「推薦入試」で一発合格を目指すケースが増えている。また奨学金で親に仕送りをする学生も出てきているという。奨学金といっても、その実態は借金だ。子供に借金を背負わせる社会でいいのか――。

バイトが豊富な東京の大学を目指した

学費の捻出は親にとって頭の痛い問題だが、進学を希望する高校生にとっても同じことだ。大学で勉強したいと考えても、親の援助が受けられないとなると、自分で進学する「自力進学」を考えるしかない。

子どもの学費を用意できないのは「親の恥」と考える人もいる。そんな場合、あまり親は相談に乗ってくれないだろう。家の経済状況を知られるのが嫌だと思えば、高校の先生にも相談しにくい。そんな高校生は自ら道を切り開くしかない。

※画像は本文とは関係ありません。

地方から上京し、現在は東京の中堅私立大に通うA君はこう話す。

「大学で学びたかったのですが、親にお金がないことはわかっていたので、自分の力で大学に進学するしかないと考えていました。東京の大学を目指したのは、時給のいいアルバイトが豊富にあるからです。地元で進学すると、アルバイト先は限られてしまいますから。学費は国公立大のほうが安いのですが、自分の偏差値では難しいので、推薦がもらえる大学のなかから、学費が安く、奨学金制度が充実している大学を選びました。今は国の貸与奨学金の上限である月12万円と地元の地域の奨学金を借りています。もちろんアルバイトもしていますが、大学生活は充実しています」

学費が安いという理由で大学を選ぶ。これはそんなに珍しいことではないようだ。教育費が受験生の志望校選びまで変えてしまう時代になってきた。

このA君は、一般入試は受けていない。それも受験にかける経費を安く抑えるためだ。一般入試の場合、受験料は1校あたり約3万5000円。当然、併願するので4校を受ければ14万円にもなる。一方、AOや推薦入試では学力試験を課していないケースもあり、一部の難関大学を除けば、まず間違いなく志望校に合格できる。無駄な経費はかからない。