夫婦関係もずいぶん前から冷え切っていた

「家庭内別居」にはもうひとつネックがありました。

妻と達也さんとの夫婦関係はずいぶん前から冷え切っていました。よって娘以上に達也さんと話すことを毛嫌いしており、今回のルールができたことで妻は「あんたと話すなんて懲り懲りなの!」と怒っているそうなのです。このままではせっかくの「家庭内別居」も意味がないものになってしまい、母娘戦争が再燃してしまうかもしれません。

写真はイメージです

何かうまい方法はないか。私は達也さんに対して、ひとつ質問しました。

「奥さんが最も心配していることは何でしょうか?」

達也さんが答えるまでもなく、それは「娘の再度の家出」でした。家事を押し付けるダメ妻(母)とはいえ、娘への愛情はあります。そこで、私は達也さんに「娘さんの家出は今回で最後とは限らない」ということを妻に伝えるように助言しました。

「また家出して(僕たち親を)困らせようとするかもよ」

達也さんは「潜在的リスク」を説明し、だから「当面、母娘で家庭内別居のような形をとろう」と妻に言いました。妻が冷静さを取り戻してくれるかもしれない。そんな願いもありました。

娘の家出で、妻は肉体的にも精神的にもボロボロになっていました。学校や警察へ足を運ぶことになり、娘の友達の親御さんには「暴力を振るった母親」というイメージが広まりました。娘には間違っても同じことを繰り返してほしくない。同じ目に遭うのは御免だ。心の底からそう思っているはずです。それは娘のためではなく、自分のためかもしれませんが、この際それはどちらでも構いません。

「今回の話(家庭内別居)は、(娘の)茜だけでなく、君のためでもあるんだよ。わかってほしい」

達也さんは妻が自分のことしか考えていないことを見越した上で、「妻のため」という点を強調しました。その結果、妻はようやく今回の提案を受け入れたのです。

▼妻は「(娘にとって)いないほうがいい存在」

達也さんが私のところへ相談に来てから3カ月が経ちました。今のところ、達也さんからの連絡はありませんが、「便りのないのはよい便り」なのでしょうか。何も起こっていないから何も言ってこないのだと信じたいところです。

達也さんが妻のことを「(娘にとって)いないほうがいい存在」と断言できれば離婚という選択肢もあったかもしれませんが、そこまで言い切ることは難しいでしょう。

離婚となれば、住環境や教育環境、そして家族構成も変化します。それは娘に対して大きな影響を及ぼすはずです。娘の不安定な心理状態が、離婚で悪化する可能性があるのです。

このような状態では、すぐに離婚を決断するのではなく、次善策として「家庭内別居」という方法が有効です。離婚したほうがいいのか、離婚しないほうがいいのか。「子供のため」に悩んでいるとすれば、「家庭内別居」という選択肢があることを思い出してください。