彼はこの話を、さまざまな企業の広報担当者が集まる勉強会で披露してくれました。プライベートな情報を扱うときにも、自社の企業情報を扱う時と同じレベルで注意が必要なことを、私自身がはじめて実感するきっかけとなりました。

はじめて会う予定の人や、会合などで名刺交換した人のことをネットで調べるのは、多くの方が仕事の一環でされているでしょう。が、逆に、自分の名前も日々、どこかの誰かに「検索されている」ことを、どれだけ意識できているでしょうか。

2017年4月には、ハーバード大学がFacebookでの不適切なやりとりを理由に、秋入学予定だった少なくとも10人の入学許可を取り消したことを、学生新聞「ハーバード・クリムゾン」が公表しています。

合格者同志のフェイスブックで、人種差別的な発言や画像のやりとりなどをするプライベートグループがあったそうです。大学は、「実直性や人的未熟さ、道徳性に疑問がある場合は入学を取り消す権利がある」と、入学選考のルールを説明しています。

リアルとネットで必要な「言葉を選ぶ力」

企業や学校に「選ばれる」ときだけではありません。

リアル社会では評判よく、能力や技術が秀でていても、ネットでの投稿内容が稚拙だったり、毒づくような感情的なコメントが多かったりすると、気づかぬうちにフォローを外され、「つながり」は遮断されていきます。

実績がありながら、なぜか人から信頼を得られない人は、ひょっとしたら秘密を守れないとか、余計な一言を言ってしまうといった傾向があるかもしれません。このような特徴や傾向は、本人もなかなか気づきにくいことです。

では、リアルとネット、ふたつの世界で生きるために必要な「情報を扱う力」とは何でしょうか?

・友人、知人を紹介される
・クライアントとの会食に誘われる
・意思決定の場に呼ばれる
・新規プロジェクトメンバーに抜擢される
・重要顧客を紹介してもらえる
・プライベートな飲み会に誘われる
・昇進のチャンスを得る
・休日のイベントに声がかかる

こうした「人とのつながり」にむけた大小さまざまな「誘われる」「選ばれる」チャンスを得るための地味ながらも重要なポイントのひとつが、「口の堅さ」です。

それは、情報を「発信する」と同時に「発信しない」ことを意識すること、と言えます。

「無口になれ」ということではありません。時と場合、相手や内容をみながら、「言う」「黙る」「伝える」を瞬時に見分ける能力、つまり、「言葉を選ぶ力」です。