長生きの「リスク」を少なく見積もりがち
また、図3をみると、年収が高い世帯ほど株式や投資信託の保有額が高く、「富める人ほど、投資で富んでいる」ということがわかる。
ニッセイ基礎研究所の北村智紀氏は「預貯金だけの人は『運用リスク』を回避することで、『長寿リスク』をとることになる」と話す。
「図4は、1973年から2015年までの任意の投資期間で『TOPIX』に投資をした場合の平均的なリターンと損失リスクです。仮に300万円で20年間の投資をすると平均で768万円になります。しかし30%の確率で元本割れの恐れがあり、その場合には平均で約100万円の損失となります。これが『運用リスク』です。
一方、『長寿リスク』は予想以上に長生きすることのリスクです。預貯金は増えませんから、貯蓄が尽きれば生活水準を落とすしかありません。国の簡易生命表によれば、男性の約40%、女性は約70%が、85歳まで生きます。ところが私の調査では『85歳まで生きる』と予想しているのは男性が約30%、女性は約40%。多くの人は長生きする可能性を低く見積もっています。運用リスクをとって株式などに長期投資をすれば、長寿リスクは減らせます。目先の運用リスクだけでなく、2つのリスクのバランスを考える必要があるでしょう」
どうせ長生きしないから大丈夫。そんな甘い見通しでは「貧乏老後」に真っ逆さまだ。これからの私たちは長生きの「リスク」を正しく把握しておく必要がある。