「すべて書く」で手に記憶が染みこむ
「青ペン書きなぐり勉強法」は、20年前から早稲田塾に通う生徒に向けて提唱していた勉強法のひとつでした。その時は「赤緑青(せきりょくせい)の力」として、弱点の「赤」、気付きの「緑」、記憶の「青」とペンの色ごとに定義付けしてノートをつくる方法を教えていました。ところが、そのうち“記憶の「青」”が飛び抜けて有名になり、全国の受験生に広がりました。今では社会人にまで浸透しているようです。
その実践に必要なものは名前の通り、「青ペン」と「ノート」だけ。あとはひたすら覚えたいこと、見聞きしたことを青ペンでノートに書きなぐってください。ポイントは「すべて書くこと」です。たとえば資格試験のために通っている講義があったら、その場で講師が発した冗談まで、試験には役に立ちそうもないことも、すべて青ペンで書き取ってください。そうすることで次にノートを開いた時、眼前に講師の授業が迫りくるほどの「再現性」が生まれ、記憶として定着するのです。
もちろん発言のすべてを書き取るのは不可能ですが、「すべて書く」という気持ちでペンを走らせる。すると、発言の中から重要な情報を取捨選択する力が自然とつき、記憶としても着実に蓄積されていくのです。
また「青ペン書きなぐり」は暗記や記憶といったインプットだけでなく、プレゼンテーションなどのアウトプットにおいても非常に有効です。私は「人に伝えられるレベルになってこそ本物の知識」だと考えています。どのように聴けばその人の話を再現できるか。それを突き詰められれば、必ずアウトプットにも繋がります。実際、私自身も重要なプレゼンテーションの前にはさまざまな場所で見聞きした情報を青ペンでノートに書きなぐり、頭にインプットしたうえで、本番に臨むようにしています。
これはスピーチ原稿の暗記とは違います。暗記した原稿を読み上げるだけでは、本番でも用意した原稿以上のものはなかなか出てきません。私は青ペンでさまざまな情報をインプットすることで、その場にあった話を即座に繰り出せるように準備しています。つまり「青ペン書きなぐり」はノート術の枠を超え、コミュニケーション力も強化する一生モノのスキルなのです。
青色の「鎮静効果」が段違いの集中を導く
そして「再現性」に加えて、もう一つの特徴として挙げられるのが、「達成感」を得やすいという点です。「青ペン書きなぐり」でお勧めしているのは、ゲルインクのボールペンで、ペン軸がスケルトンタイプの青ペンを使うことです。ゲルインクは減りが早く、軸が透けているとインクの減少を即座に実感できるため、「自分はこれだけやってきた」という達成感が得られやすいんです。
また、使用するノートはルーズリーフやレポート用紙といった一枚ずつバラバラになってしまうものは避け、一冊に綴じられたノートを使ってください。これも青ペンと同じく達成感を「視(み)える化」するためで、一冊使い終わるごとに「やり遂げた」という自信に変わります。使い終わったペンやノートは保管しておくといいでしょう。努力が視覚化され、いざというときに自分を鼓舞することができます。