シャワーのように英語を浴びればOKなのか?
「聞き流すだけで、英語が身につく」という謳い文句のリスニング教材が世のなかに出回っている。新聞やテレビでの宣伝を見聞きした人も多いだろう。
しかし、英語の達人たちの間では、「初心者にはあまり役に立たないのでは」という見解が支配的なようである。
自然科学研究機構生理学研究所教授の柿木隆介さんは「日本語の意味はこうだと教えても、そう簡単には頭には入りません」という元帝京平成大学教授の後藤秀機さんは、「知らない言葉を聞いた場合、ウェルニッケ野の“辞書”に載っていないので、脳は言葉とは認識しません。結局、単語力とリスニング力はお互いに強く助け合う関係にあるのです。ただ聞くだけではリスニングの力はなかなか育ちません」と説明する。
英文テキストを読みながらのリスニングもハードルが高い。ジーエルアカデミア代表取締役の塚本亮さんは、「読むほうに神経がいってしまい、会話が雑音に聞こえてしまうかもしれません」と難色を示す。英会話講師のニック・ウィリアムソンさんは「洋画を使う手もありますが、最初は日本語字幕付きのほうが、入っていきやすいです」とアドバイスする。
英語の聞き分けは何歳になってもできるのか?
人間のなかで最も耳がいいのは赤ちゃん。したがって、生まれたばかりのときが、英語のリスニングには最適のようである。ところが残念なことに、赤ちゃんのリスニング能力は、成長とともに急低下してしまうという。
柿木さんは「生後半年ほどで、一番聞き慣れた言語だけをうまく聞き分けられるように、脳がチューニングされてしまいます」と説明する。さらに、後藤さんは「小学校入学前には脳の省エネのため、使わない神経回路がどんどん消えます。これを『臨界期』と呼んでいて、それ以降に新しい言語をマスターするには、それなりの工夫が必要です」と話す。
しかし、諦めることはない。船津さんは次のようにエールを送る。
「日本人の赤ちゃんは、確かに生後11カ月程度で、英語の音を聞き分けなくなります。しかし、日本語を効率よく身につけるため、不要な英語の聞き分けを“やめただけ”なんですね。60代、70代の人でも、繰り返し発音の練習をすれば、英語の聞き分けができるようになっています」
ジーエルアカデミア代表取締役。偏差値30台から独自の勉強法で同志社大学に入学。卒業後ケンブリッジで心理学を学ぶ。帰国後、心理学の知見と自身の経験を活かした英会話学校のジーエルアカデミアを設立。
児童英語研究所社長。1965年生まれ。米国カンザス州の大学で学んだ後、右脳教育の第一人者の七田眞氏に師事し、児童英語研究所に入社。著書に『子どもの「英語脳」の育て方』などがある。
元帝京平成大学教授。1943年、東京生まれ。神経生理学者、医学博士。早稲田大学理工学部卒、東京工業大学大学院修了。著書に『先端脳科学者による1ヵ月かんたん英会話脳トレ』がある。
自然科学研究機構生理学研究所教授。1978年、九州大学医学部卒業。ロンドン大学医学部研究員などを経て、2004年より現職。専門は神経科学。著書に『記憶力の脳科学』『どうでもいいことで悩まない技術』などがある。
カリスマ英会話講師。シドニー大学で神経心理学を専攻。卒業後、東京学芸大学に研究生として来日。TVの司会も務める。著書に『中学レベルの英単語でネイティブとペラペラ話せる本』などがある。