いつまでたっても「空耳アワー」で困っている

TVの深夜番組「タモリ倶楽部」に、「空耳アワー」という人気コーナーがある。洋楽を聞いて、面白い日本語に聞こえたフレーズを視聴者が投稿するものだ。その内容を聞いて、笑い転げたことのある読者も多いだろう。しかし、「英語が英語に聞こえない」という日本人の“笑えない”弱点を、見事に逆手に取った企画だともいえる。

脳科学を長年研究してきた元帝京平成大学教授の後藤秀機さんは「日本人は、脳のウェルニッケ野(※)に“日本語の辞書”ができていて、英語を聞いても、それに近い日本語と勘違いしてしまうんです。空耳アワー脱却には、そこに“英語の辞書”を追加する必要があります」という。そのためには「英語を音読すること。自分の声は、体内の骨伝導で精密に脳に伝わるので、耳で英語を聞くよりも断然効果的です」と勧める。

(※)単語などの意味を蓄積する感覚性言語中枢

英会話講師のニック・ウィリアムソンさんは「その際に英語は、正しい発音で読まなければなりません。そうしないと、英語を聞き取る能力も上がらないからです」と釘をさす。「アルファベットの正しい発音、フォニックス(文字読みのルール)、『give up』を『ゲバップ』のように単語をつなげて発音する、などの学習が欠かせません」と児童英語研究所社長の船津洋さんはいう。

また、船津さんは多読も勧める。

「夏目漱石は、辞書を引かずに英文をひたすら読むことを奨励しており、私も中学生向けの集中講座では1日2万語を音読させます。それも正しい発音で。それだけで英語が苦手な生徒も、英検3級の長文読解の問題の7~8割は取りますし、発音もよくなります」

黙って聞くよりも音読の継続が効果的って本当?

英語の勉強は「継続は力なり」であるとわかっていても、多忙なビジネスマンは時間の確保が難しい。勉強は、毎日短時間でも行うべきか、休日に集中して行うべきか、気になるところ。結論からいえば、「毎日コツコツ勉強したほうが効果的」のようだ。

自然科学研究機構生理学研究所教授の柿木隆介さんは「毎日繰り返し勉強すれば、長期記憶として脳に定着しやすいからです」と話す。そこで船津さんは「会社帰りの電車で、スマートフォンの英字ニュースを読む。家ではテキストを音読する。それだけで毎日30~40分の勉強になります」と助言する。

重要なのは「音読」で、その理由について後藤さんが説明する。

「記憶には、暗記した年号のような意味記憶(1)、旅の思い出のようなエピソード記憶(2)、自転車の乗り方のような運動学習の記憶(3)の3種類がありますが、体で覚えた(3)が最も強い記憶です。音読すれば、発声で口の筋肉や舌、歯も使い、(3)の記憶になります」

後藤さんは「まず正確な音読で発音力をつけると、リスニング力も高まります」という。