「生態系」を持ち出す朝日のスノッブさ

さらに「ニュージーランドでは06年に巣が見つかると、半径2キロ圏の土壌などの移動を制限し、殺虫エサや捕獲わなを使った監視を3年間続けて定着を阻んだ」と朝日社説は続ける。

ニュージーランドの成功はNHKなどのテレビニュース番組でも取りあげられた。被害先進国の例を参考にするのは良いことだ。

朝日社説は「私たちも正しい知識で、この問題にのぞむ必要がある」とも主張するが、その通りだ。感染症対策などと同じように人に害を与える生物に対しては正しい知識を持って対処することが何よりも大切である。

「在来種のアリは、農作物や植物を害虫から守ったり、種子を運んだりと、生態系の中で大切な役割を果たしている。殺虫剤でむやみにアリを殺すようなことはせず、落ちついた行動を心がけたい」

最後に朝日社説はこう書くが、確かに「落ち着いた行動」は重要ではある。ただ「生態系」の話まで持ち出すのは、知的ぶって格好付ける朝日新聞らしい気がしてならない。

「SFTS」も正しい知識を持てば怖くない

ところで7月24日、厚生労働省がこんな発表をしている。

「50代女性が猫にかまれた後に、マダニが媒介するウイルス感染症『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)』を発症し、死亡していた。厚労省は、都道府県や獣医師会などに注意を喚起する通達を出した。SFTSで、哺乳類を介して人が死亡したことが判明したのは世界で初めて」

SFTSはウイルス感染症で、数年前からその感染死が新聞やテレビで伝えられてきた。マダニではなく、猫にかまれて感染し、亡くなったというのだからだれもが驚かされるだろう。

最後にこのSFTSについて触れておきたい。

SFTSウイルスに感染すると、高熱が出て下痢や嘔吐などを起こし、血液中の血小板や白血球が減少する。重症化すると、けいれんや意識障害、下血をともなう。ワクチンや抗ウイルス薬はなく、治療は対症療法に限られる。

こう書くと、かなり恐い感染症のように思われるが、インフルエンザのように人から人へとせきやくしゃみで飛沫感染することはない。感染力は弱く、流行する危険性はほとんどない。ウイルスを保有するマダニは1%にも満たないというから、ことさら怖がる必要もない。感染者と濃厚接触して血液や体液に触れるようなことがなければ、感染者から感染することもない。

日本では2013年1月末、初の死者が山口県で確認された後、愛媛、宮崎、広島、長崎……と感染が判明し、そのうち半数が死亡している。

日本で初めて確認され、死者も出たというだけで大騒ぎしてしまう。正しく怖がることがいかに難しいかがよく分かる。ヒアリも同様である。

(写真=Photoshot/アフロ)
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