S-TRAIN向けに「40000系」を開発

S-TRAINに使われる電車は「40000系」という。西武鉄道が「もっとも進化した通勤電車」と胸を張る自信作だ。最大の特徴は座席。横向き座席(ロングシート)と前向き座席(クロスシート)を用途に合わせて転換できる。S-TRAINとして使う場合は、着席時の快適性を重視した前向き座席として使い、通常の通勤電車として使う場合はラッシュアワーの乗降動線がスムーズな横向き座席になる。

座席は回転できるクロスシート。S-TRAINとして使う時は前向き(写真)に、一般電車として使う時は横向きのロングシートに変身する。

西武鉄道は今後、地下鉄直通運転用の主力車両として40000系を増備し、旧型車両と置き換える方針だ。西武線内用の新型車両30000系に合わせて、車体色はコーポレートカラーの青。西武鉄道のロゴマークに合わせて水色と緑色をあしらった。今後はこの色の列車が増えて、従来の黄色い電車と入れ替わる。40000系のうち、座席転換するS-TRAIN仕様は今後4編成が追加される。その他は座席転換仕様ではなく、固定したロングシート仕様となるという。

40000系に共通する新要素は、10号車に用意された「パートナーゾーン」だ。座席を設けず床面積を広くして、車イスやベビーカーの利用に配慮している。パートナーゾーンは通勤時間帯に譲り合いの場として機能するほか、S-TRAINとして使用する時は展望車の役割を持つ。10号車は横浜寄りだが、S-TRAINは飯能で進行方向が逆転するため、秩父方面への先頭車になる。

展望室としても楽しめるパートナーゾーン。車イスやベビーカーの利用に配慮している。
パートナーゾーンには大きな窓と手すり、腰掛けがある。
車いす用の固定具。

トイレ、空気清浄機、コンセント、フリーWi-Fi完備

座席指定のS-TRAINは途中駅で降りられない。2時間の乗車となれば必須な設備として、1編成に1カ所トイレが設置された。西武鉄道が特急レッドアローのための水回り処理施設を持っているから可能になった設備である。トイレは通常の通勤電車使用時も利用できるが「あまり知られていないようで、通勤時に実際にご利用なさる方は少ないです」(西武鉄道)。

2時間の乗車となればトイレも必要。関東の私鉄通勤電車でトイレがあるものは珍しい。

最新設備はまだある。プラズマクラスター発生装置を搭載した空気清浄器を1車両につき2~4台ずつ設置。コンセントは2座席にひとつ。さらに無料の通信設備「SEIBU FREE Wi-Fi」も用意した。SEIBU FREE Wi-Fiはメールアドレスを登録するだけで無料で利用可。西武線内だけではなく、他社の区間でも利用できる。

壁際にはコンセントがある。

中吊り広告廃止も大きなトピックだ。車内広告をデジタルサイネージ中心とし、中吊りを廃止した。これは日本の通勤電車として初の事例となった。

中吊り広告を廃止。紙の広告の代わりに、デジタルサイネージを設置している。