特急料金は最長で1060円

指定席料金は、西武鉄道がレッドアローより少し安めの設定で、距離に応じて300円または500円。東京メトロ区間は一律210円、東急電鉄・横浜高速区間は共通で一律350円。各社にまたがる場合は合算となった。この料金も各社が独自に検討したという。結果として、平日は510円均一となり、座れる通勤電車としては他社と比較してもほぼ同じ。休日は最長距離の西武秩父~元町・中華街で1060円となる。


S-TRAINの特急料金。左が休日用、右が平日用。

「乗車実績からみて、悪くない値段だったと思っています。ただ、乗り慣れない人、はちょっと高いと感じるようで」と廣田氏。

乗ってみれば価格に見合ったサービスだと思うし、乗り換えなしの快適性、速達性を考えると、むしろもっと高くても良いと思うくらいだ。その代わり、家族割引、敬老割引、回数割引などを検討してはどうか。鉄道の運賃は国土交通省から上限運賃の認可を受ける必要があるが、座席指定券などの付加価値分は鉄道事業者の裁量が認められている。ここもまだまだ工夫する余地がある。

運行実績から見えてきた「新たな需要」

S-TRAINの列車番号は、休日の秩父横浜方面が1ケタ。平日が100番台の3ケタ。「S-TRAIN1号」は元町・中華街発西武秩父行きで、「S-TRAIN2号」は飯能発元町・中華街行き。これがもっともコンセプトを体現する列車と言える。運行開始から約2カ月が経過し、休日ルートは行楽シーズンもあってほぼ満席。土日の需要を掘り起こせた実感があるという。

その反面、平日については「まだまだPRが必要というところ」とのこと。西武鉄道と東京メトロは7月11日から8月10日まで、「S-TRAIN 快適通勤応援キャンペーン」を実施する。西武鉄道のチケットレスサービス「Smooz」でS-TRAINの指定席券を10回以上購入すると1000円分のICカードチャージ引換券がもらえる。

平日のS-TRAINについては、当初の快適通勤以外の需要も掘り起こせたという。

「春休みの平日のS-TRAINでは、西武鉄道沿線から豊洲のキッザニアに出かけるご家族が多くいらっしゃったそうです」

子どもに人気のキッザニアは朝9時に営業開始。S-TRAIN102号の豊洲着07時24分は早めだが、8時30分の開場時には既に並んでいる家族も多いので、このタイミングがちょうど良いそうだ。

同様のことは、休日のS-TRAINにもありそうだ。秩父で遊んで横浜に帰るという想定のS-TRAIN4号は、筆者が見る限り、西武線内、東急線内の利用者も少なくない。乗客が去った席に、新たな乗客が座るなど、座席の回転率も良かった。

そもそも、秩父と横浜を結ぶというルートは、高速バスも、JRも、マイカー利用者も想定しなかった。S-TRAINは新たなルートを開拓したといえる。S-TRAINと、S-TRAINをきっかけにつくられた40000系は、新たなサービスを生み出す装置になっている。

■次のページでは、西武鉄道「S-TRAIN」の企画書を掲載します。