ここまで意味的価値の重要性について述べましたが、大切なのは、機能的価値と意味的価値を融合した、相乗効果としての価値づくりです。例えばiPhoneは、アルミを削り出したユニボディの美しいデザインだけが重要なわけではありません。商品コンセプトやユーザビリティ、機能などを含めた、統合的な価値として高く評価されています。このような、機能的価値と意味的価値を統合した価値づくりをいかに行うかが、日本の製造業が競争力を取り戻すためのカギと言えます。

問題提起は新たな価値を探索すること

消費財において、機能的価値と意味的価値の統合的価値を考えるための枠組みが、SEDA(シーダ)モデルです。図のように、サイエンス(Science)、エンジニアリング(Engineering)、デザイン(Design)、アート(Art)の4つの視点から構想します。横軸は機能的価値と意味的価値の対比で、縦軸は問題解決と問題提起で分類します。問題解決が既存の知識を活用・深化させることであるのに対して、問題提起は新たな価値を探索することです。長期的な競争力に結びつけるには、目前の問題解決だけでなく、新たな価値を探索することが重要です。

この2つの軸により、機能的価値の問題解決がエンジニアリングで問題提起がサイエンス、意味的価値の問題解決がデザインで問題提起がアートと位置づけられます。デザインとアートの違いは、顧客の主観的な要望までも理解し、商品に反映させるのがデザインで、顧客が意味づける内容の新たな提案がアートです。

顧客価値の高い商品を生み出すには、これら4つを統合した価値の創出が求められます。第1に、サイエンスとエンジニアリングによって実現される機能的価値と、アートとデザインが貢献する意味的価値を融合させなければなりません。第2に、商品として具体的な問題を解決するエンジニアリングとデザインに加えて、問題提起を担うサイエンスとアートとの間でも融合的に価値を創出することが理想です。

なかでも、商品の成功において必要条件と言えるのが、エンジニアリングとデザインの統合的価値です。2つを融合させることで、消費者がその商品を所有し、使用する際の満足度や喜び(ユーザーエクスペリエンス=UX)が高まります。