【塩田】野党時代以来、公明党と創価学会の関係に変化が生じている面はありますか。 

【山口】基本的にはないと思います。公明党も時代の変化に対応しています。結党当初、日米安全保障条約や自衛隊は違憲の疑いがあり、解消しようというトーンでしたが、1990年頃、与野党逆転状況の国会で徐々に政策転換し、自衛権を認めて自衛隊を肯定する、PKO(国際連合平和維持活動)協力を推進する、有事法も安保法制もつくるという各段階で、批判を浴びながら厳しい議論をしてきました。党員の中には創価学会の方もたくさんいますが、現場で意見や批判にさらされ、説得するという努力を繰り返してきました。

【塩田】2度目の安倍政権は4年5カ月が過ぎました。

【山口】公明党は要所、要所で役割を発揮していると思っています。たとえば日中関係。12年の総選挙の後、13年3月の全国人民代表大会までの3カ月余り、政治空白があった。安倍首相はすぐに動けない。中国側も安倍さんに対して先入観があり、対応できない。韓国では朴槿恵大統領は選ばれたけれど、政権ができていない。この空白を埋める役割が公明党にあると考え、安倍さんと相談して、13年1月、通常国会開会前に訪中し、習近平総書記と対話の機会を持った。今、やっと日中首脳会談が開ける環境になってきています。

安倍政権で公明党が果たしてきた役割

【塩田】2度目の安倍首相の政権運営をどう捉えていますか。

【山口】1回目の経験を教訓にして、二度と失敗しないようにと気をつかっています。1回目は信念を強く高く掲げ、実現するという直線的な思考が強かった。今はそうは思っても、違う面にも配慮し、周囲への根回しも心がけながら、段階的に整えてやっています。

【塩田】同じ与党として、自民党と安倍首相の関係はどう映りますか。

【山口】以前は議院内閣制の下で党が政権をコントロールする面が強かった。政策決定も、党で積み上げ、合意を得たものを政府に委ねるという形です。ですが、安倍さんのスタイルは官邸主導による意思決定という面が強く出ています。大所帯の自民党を運営する際のある種の知恵かもしれません。党が強いと、何をするにしても時間がかかる。異論・反論が続出して党が割れているように見えます。安倍首相はその点が第1次内閣で政権を失ったこと、民主党政権が長持ちしなかったことの大きな教訓と見ていると思います。

【塩田】現内閣での首相官邸と霞が関の官僚機構との関係は。

【山口】以前の歴代内閣は各省の出向者の集まりで、首相や官邸の意向が省庁とうまく噛み合っていなかった面もあったかもしれません。安倍さんは求心力を働かせるためにいろいろ工夫しています。人事権をしっかりとグリップしたのが非常に大きいと思います。

【塩田】昨夏の参院選の結果、自民党は衆参で単独過半数を超えました。議院内閣制からいえば、連立解消という道もありますが、変わらず自公連立政権を続けています。

<【山口】自公連立は多様な民意を受け止める力があり、意見が多少違っても合意をつくる力がある。選挙でも両党の協力関係が成熟してきています。この3つは、数の問題に置き換えることはできない。その点は安倍さんも自民党もよく認識していると思います。自民党から、連立の再検討を、といった話はないですね。参院選は互いの選挙協力で成り立っていて、両党が協力し合って獲得した結果と自民党も受け止めていると思いますね。