20年ほど前、新卒として広告制作会社に入社しました。配属早々、上司から「君は気の利かせ方を知らないから勉強しなさい」と言われ、新橋のクラブに連れて行かれました。

女子大卒ということもあり、お酒の作り方はおろか飲み方もろくに知らなかった当時の私は、初めてのクラブでどう過ごせばいいのか皆目見当も付かず、席に着いても身を縮こまらせるしかありません。

そんな姿を見たママが、「日中はお仕事で疲れたでしょう。まだ慣れていないでしょうし。よかったら召し上がって」と言って、他のお客様からの手土産でしょうか、私にだけケーキを振る舞ってくれました。談笑する上司の隣で、「ママもお店のお姉さんも優しくてきれいだなぁ、ケーキおいしいなぁ」と、むしゃむしゃ食べているうちに時間は過ぎていきました。そんなママの気遣いにほっとさせられたことを、今も鮮明に覚えています。「気の利かせ方を学ぶ」という上司の期待には応えきれませんでしたが……。

発売中のプレジデント2017年5月1日号「できる大人の満点マナー」。そのうちの「銀座クラブママが告白『偉くなる飲み方、最悪の飲み方』」という記事の取材では、3人のママにお話を聞きました。私が連れて行かれたように、若手や女性の部下をクラブに連れて行くという上司は今も存在する、とのこと。そこには、労いや社会勉強などいろいろな意味がこめられているようです。

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取材で訪ねたお店には、いずれもきらびやかながら寛げる銀座のクラブらしい空気が漂います。そんな最高の雰囲気の中、きれいなママと弾む話に、ついついお酒が進み過ぎてしまう人もいるのでは、と気にかかりました。私はケーキを食べるのに終始していましたが、「初めて連れて行ってもらった銀座で、雰囲気に飲まれて飲み過ぎてしまった」ということは起こらないのでしょうか。また、銀座慣れした人でも「仕事が成功して祝杯を挙げにいったら、気が緩んで調子に乗りすぎた」ということはないのでしょうか。

そこで、「悪酔いし、マナーの悪い客をどのように対処するか?」という質問に答えてくれたのは、2年前に「バブル後、最短&最年少ママ誕生」と注目を集めたクラブ「城」の桃谷優希ママ。

「銀座で飲むような方には滅多にないことですが、他のお客様にご迷惑をかけるのはいちばんあってはならないことなので、まずは場所を認識してもらえるようにお話しします。その後、安全にお帰りいただけるよう段取りします。大切なお客様ですので」とのこと。

続けて「ただ、この場合の責任はお客様ではなく店側にあります。そこまで酔わせた店の責任です。お客様の体調や雰囲気を見ながらお酒を作るのがホステスの仕事。泥酔するまで飲ませるなんて言語道断、クラブとしては失格です。単に売り上げだけを考えれば、お客様にたくさん飲んでいただく方が手っ取り早いのかもしれませんが、クラブとはそういう場所ではありません」とぴしゃり。客にマナーを求める前に、最高の接遇を行う――そんなプロフェッショナルとしての気概と気遣いを感じました。

とはいえ、一流が集う夜の銀座には、大人の社交場として男を磨くための礼儀作法が満ちあふれています。記事では3人のママが説く大人の男としての望ましいマナーやNG行為を具体的に紹介していますので、お楽しみください。

発売中のプレジデントでは、銀座ママをはじめ、一流企業、自民党、芸能プロダクションなど、礼儀に厳しいさまざまな世界で第一線に立たれる方々を訪ね、「マナーの基本」を教えていただきました。新入社員が入社する4月はマナーを見直す絶好の時期です。ぜひご覧ください。

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