観光都市横浜はこれからが正念場

【三宅】横浜は、観光資源が豊富なので、ほうっておいても、来てくれる。自由に楽しまれるようなイメージもあるのですが、やっぱりそこはそこで綿密な調査をされて、興味を持ってもらえる情報発信が不可欠ということですね。

【中山】はい。時代は常に動いていますから、旧態依然とした思い込みほど怖いものはありません。パーセプションという英語があります。日本語では認識という意味ですが、横浜について、行政スタッフが思い込んでいるイメージと、外国から見られた横浜は違うわけです。例えば、日本人なら、横浜に対してエキゾチックといったイメージを抱くかもしれません。しかし、国籍や宗教的背景が違う人たちにしてみれば、必ずしもそうではないでしょう。だって、ヨーロッパの方たちにとって山手西洋館は、日常的によく見慣れた建物なわけですから(笑)。

『対談(2)!日本人が英語を学ぶ理由』三宅義和著 プレジデント社

【三宅】なるほど。私なんか田舎出身なので、横浜と聞くと、それだけで、もうすごくオシャレで、エキゾチックで、憧れてしまう響きがありますけれども(笑)。いずれにしても、海外からの訪問者が増えてくると、当然、その人たちに好印象を与えたいし、横浜市内の滞在を楽しんでもらいたいわけです。けれども、そこには言葉の壁があります。それは、観光客、そして市民の両方に当てはまることでしょう。現実的に用いられる言語は英語ではないかと推測しますが、これまで、横浜市として、外国人の宿泊者数増加に対して、どのような対応策を取ってこられましたか。

【中山】いま、外国の方にすごく人気があるのが、「50 THINGS TO DO IN YOKOHAMA」というガイドマップです。新聞1ページ大の地図を封筒ほどの大きさに折りたたんだもので、50の横浜の観光スポットやショップが紹介され、裏がみなとみらい21地区を中心にしたマップになっています。取材と記事は外国人の記者さんにお願いしました。そうすることで、私たちが普段、思ってもいない、気づかないことに、海外の人たちが興味を持っているということがよくわかりました。

例えば、私が全然知らなかったのは「爬虫類カフェ」。早速見に行きましたが、怖くて中に入れません(笑)。でも、外国の方の目線で編集すると、こんなところも紹介されるというのは、とても新鮮な発見でした。

さらに、文化観光局、あるいは市がプロモーションを行うときのキャッチコピーとして「Inspire Your Soul/Find Your YOKOHAMA」を使っています。観光ポスターにも刷り込んで、海外のお客さまには、訪れるたびに感性を刺激する「新しい横浜」を発見してほしい。私は、そうした施策を先手、先手で打っていかなければいけないと考えています。

とはいえ、最後はやはり、人と人であることは間違いありません。市内で外国人をガイドし、あるいはレストランでおもてなしする。タクシーのドライバーの方なら、目的地にスムーズにお連れする。それが本当のホスピタリティではないでしょうか。その意味では、これからが正念場だなと心して取り組んでいます。

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)
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