東京で一番の出生率が「利島」であるワケ
今年1月には人口314人の利島(としま)を訪問しました。利島では最近、「Iターン」による若い世代の移住者が増えています。このため利島の出生率は3.16で、都内随一の高さです。こうした変化もインターネット環境が整いつつあることと関係があるようです。今後、さらに整備が進むことで、移住者はさらに増えそうです。
都知事選挙からこれまで、八丈島、小笠原(父島)、三宅島、御蔵島、伊豆大島、利島の6島を訪問しました。知事在職中に11島すべての有人島を回るつもりでいますから、ちょうど折り返し地点です。島を訪ねてみると、それぞれに豊かな文化や特色があり、大きなポテンシャルを秘めていると感じました。まるで「宝島」です。
大島では「伊豆大島椿まつり」に参加しました。大島には世界有数の美しい椿、雄大な三原山の風景、そして多彩な海の幸があります。
3月19日には八丈島と青ヶ島を訪問します。八丈島では「フリージアまつり」のセレモニーに出たあと、島に自生する植物の煮汁で染められた草木染めの絹織物「黄八丈」の工房へ行く予定です。
青ヶ島には、青ヶ島産の芋と麦麹から造られる幻の焼酎「青酎(あおちゅう)」があります。特に焼酎のもろみを蒸留する過程で、最初にとれる原酒を「初垂(はなた)れ」といいます。全体の数%という希少なものです。今回の訪問では、「青酎」を造る工場を視察予定ですが、都議選の終わる7月までは断酒しているため試飲できないのが残念です。
「宝物」は、まだあるはずです。都では「東京宝島推進委員会」を開いて、島の魅力を掘り起こす取り組みを始めました。私は04年から06年まで内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)として、沖縄の39ある有人離島の魅力を掘り起こしてきました。専門家の力を借りながら、島の「宝物」に磨きをかけることで、島の活性化を進めます。
来年度は島嶼地域での電気自動車(EV)の実証実験も始めます。島は、走行範囲が決まっているため、他地域と比べて実験に向いています。潮風があるため傷みやすい環境ですが、厳しい環境条件はむしろ実験では好都合です。EVが根付けば、割高なガソリンを使わずに済むため、島のサステナビリティも向上することでしょう。
テレワークにしても、島の生活の見直しにしても、なすべきことは山ほどあります。あらためて身近なところから、見つめ直す。磨き直す。「宝物」は身近にあります。「心技体」、つまり意識、技術、制度を見直すことで、もっと可能性を求めていきましょう。
1952年生まれ。カイロ大学文学部社会学科卒業。テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』などでキャスターとして活躍。92年政界に転身し、環境大臣、防衛大臣などを歴任。2016年、東京都知事に就任。