「敵」づくりの功罪

「第三極」は特定の利益と結びついていないことや、しがらみがないことをウリの一つにしていた。そして、特定の利益と結びついている集団、しがらみがある集団を「既得権益ベッタリ」、「利権ズブズブ」と批判し、自分たちの活動を「既得権益との闘い」と位置づけた。

「みんなの党」の場合、電力(電事連、電力総連等)、医師会及び農協を「既得権益」とし、それらと結びついた政治家(自民党及び旧民主党)をさまざまな機会を捉えて口撃した。また、「既得権益」や「利権」との結びつきという点では、財務省や経済産業省を筆頭に、霞が関の中央省庁も批判の対象にした。

無論、これらは単なる批判のための批判ではなく、具体的な政策(電力であれば徹底した電力自由化、農業であれば農協改革等。)があっての上での批判や口撃ではあったが、立ち位置を明確にする、穿った言い方をすれば目立つための「敵」づくりという側面も多分にあった。

個別の政策への対応には是々非々で臨むとされていたが、それでは有権者からは分かりにくいことも多く、分かりやすさや目立つことのみならず、闘う姿を見せるという点でも「敵」づくりは重要であった。加えて、他の「第三極」との差別化も求められ、政策的な違いを明確にするのみならず、場合によっては他の「第三極」――「みんなの党」にとっては当時の「日本維新の会」――が「敵」に仕立て上げられた。

小池「新党」の場合、都政・都議会に巣食う利権勢力と闘い、「都民ファースト」を掲げて都政を都民の手に取り戻すため、「東京大改革」を進めるとしている。闘う相手、つまり「敵」は利権勢力とされる都議会自民党であり、この「敵」と闘う勢力を「都民ファースト」の旗印の下に糾合しようとしている。

小池「新党」は自民党でもなく(小池知事自身は自民党員のままであるが)、民進党でもない、新しい勢力である。複数の会派が小池知事支持、「東京大改革」支持で群雄割拠する場合であっても、自民党でもなければ民進党でもない。(自民党や民進党の分派が自民党籍、民進党籍のまま小池知事支持を掲げる場合も考えられなくはないが)

そして、小池「新党」が進めようとしている「東京大改革」は、これまで自民党も民進党も進めることが出来なかった政策であり、政策的な立ち位置もはっきりしている。

先に「みんなの党」に関して挙げた「第三極」の要素は一通り備えていると言っていいだろう。ただし、小池「新党」はあくまでも現段階では東京限定の動きであり、「東京大改革」も東京のための政策であって、地域政党の域を出ていない。