【Q】東京都議会議員選挙をにらんで、小池百合子知事が新党の準備に入ったといわれています。その小池新党への期待感が、橋下さんと日本維新の会(松井一郎代表や馬場信幸幹事長)とで、かなり温度差があるように感じます。それはなぜだと思われますか。

僕は評論家、松井さんは政治家だからスタンスが違う

【A】これは大変いい質問です。政治と評論の違いを本質的に突いています。これからこの辺りを中心に政治の本を書いていこうと思っています。

一言でいえば、僕は評論家(識者)、松井さんや馬場さんは政治を実際にやっている政治家という違いが、そのスタンスの違いに出てきます。

このこと自体、実際に政治をやったことのない評論家や学者は理解できないでしょうし、都政改革で頑張っている上山信一さんも理解できておりません。これは仕方がありません。上山さんは改革の実務についてはプロですが政治の経験はありませんから。

僕は今は政治家ではありません。実行する責任がないのです。ですから小池さんの改革で良いものは良いと評価すればいいだけの立場です。実際に東京の改革が進めば多くの人にメリットが生じますし、ひいては日本の改革につながればいいので。そしてダメなところはダメと指摘する。その指摘も改革が進んでくれた方がいいので、自分の経験から改革が進むように持論を展開します。

他方、松井さんや馬場さんは、自らの政策を実行する意図と責任がある。政策を実行するには政治力が必要です。上山さんはここの理解が足りない。

政治力は大阪維新の会という地域政党だけではなく、日本維新の会という国政政党の政治力も重要です。日本維新の会があるから国政にも色々と働きかけができるのです。もちろん、それは松井さんや馬場さんをはじめとする維新のメンバーと首相官邸や与党メンバーとの人間関係があってのことですが、しかしそれも日本維新の会の政治状況が非常に影響してきます。

ということで松井さんや馬場さんは、首相官邸や与党メンバーとの人間関係や日本維新の会の政治状況を考えなければなりません。これが政治そのものです。学者が御託を並べる政治学とは異なる現実の政治です。

菅義偉官房長官は小池さんと戦った増田寛也さんを応援していました。自民党も増田さんを推薦していました。そして小池さんは、自前の勢力だけではなく、公明党や民進党、その他の政治グループとも連携する模様です。

維新は東京では強くありませんが、それでも衆議院選挙、参議院選挙では一定の票数を獲得しています。そうであれば小池さんグループに入って小池さんグループの候補者同士で票を分け合うのがいいのか、維新独自でやった方がいいのか。ましてや維新は自民党や民進党とガチンコでやってきました。小池さんが民進党と組むなら、そこには入れないでしょう。

結局、松井さんや馬場さんは、日本維新の会の政治状況というものを考えて、小池さんとの間合いを考えざるを得ません。都民不在の党利党略だと言われても、政治力がなければ何も実行できないことも現実です。

単純な権力欲しさ、政治家という身分欲しさに党勢を確保することはご法度です。しかし、自らの政策を実現するために党勢を確保すること、それはまさに政治です。外から政治を評論すればいい評論家や学者とは違います。

僕は今、外から評論する立場になっています。上山さんは改革のプロですが、今は都政しか見えていません。しかも自分の担当領域の部分だけです。上山さんのような人材は改革にとって必要不可欠ですが、改革は政治力がなければ実行できません。

松井さんや馬場さんは、純粋な都政のことだけでなく、大阪の改革、そして日本の改革のことも考えて、それを実現するための日本維新の会の政治力というものを中心に、小池さんとの政治的な間合いを考えている。

ここが僕とのスタンスとの決定的な違いに表れているのでしょうね。僕も政党の代表なら、このような間合いを考えざるを得ず、単純に都政改革頑張れーー!! とはならないでしょう。

そして重要な問題は、このような政治判断をするのに有益な専門家の著書が日本にはないことです。現実の政治判断というものに関係なく、著者の独りよがりな問題意識を基に細かな事実を並べ、自らの妄想的推論を展開して悦に入っている政治本ばかりですね。これからの時代、物知りになるためだけの本はあまり必要ありません。政治家が現実に判断するのに必要な事実分析・評価・判断ポイントを提示する政治本を政治家は求めています。そのようなものを書きたいですね。

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.38(1月17日配信)からの引用です。全文はメールマガジンで!!

(撮影=市来朋久)
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