取引で赤字が出たら申告したほうがお得
株取引の納税方法は、2003年に証券税制が刷新され、確定申告が義務付けられることになった。その際、一般の投資家に配慮して導入されたのが「特定口座」で、源泉徴収の有無によって2種類ある。
「源泉徴収あり」は、証券会社が株式等の売買損益にかかる税金の計算から納税まで代行してくれるもので、原則的に自分で確定申告する必要はない。ただし、サラリーマンの場合、通常なら税金のかからない年間20万円以下の利益が出た場合も源泉徴収されてしまい、この分の税金は確定申告により還付を受けることはできない。一方、「源泉徴収なし」は、申告に必要な年間取引報告書は金融機関が作成してくれるが、確定申告は投資家自身ですることになる。そのほか、一般口座では損益計算も確定申告も自分でしなければならない。年間20万円以下の利益については、申告をする必要はないのがメリットといえる。
税理士の落合孝裕氏は、「高額な運用をしている人や反対に少額の運用をして年間20万円以下の利益しか見込まれない人を除いて、特定口座は『源泉徴収あり』を選ぶのが一般的」だという。
数千万から数億円単位で運用しているような人は、「源泉徴収なし」を選ぶと納税の後送りができて、運用中の資金繰りは有利になる。とはいえ、これは稀なケースだ。
「最終的には誰もが納税しなければならないので、一般投資家は、最初から『源泉徴収あり』を選んだほうが申告の手間を省けます。ただし、売却損が出た場合は、確定申告しないと損を取り戻せません」
上場株式などを売却して、利益よりも損失のほうが大きかった場合、「譲渡損失の損益通算」といって損失金額を最大3年間繰り越すことができる。ただし、これを利用するには確定申告が必要。また、複数の金融機関にまたがって取引していて、「A証券の利益とB証券の損失を相殺したい」という場合も申告しないと通算できない。
「株取引で赤字が出た場合は、確定申告すれば、課税所得を下げることができるので、翌年以降の住民税も安くなります。株式等の売買で損が出たという人は、税理士に相談するか、証券会社から発行される年間取引報告書をもとに自分で書類を作って、忘れずに確定申告しましょう」