上限額が約2倍手続きも簡単に
地方自治体にお金を寄付すると、お得な特産品がもらえる「ふるさと納税」。その「税効果も知っておきたい」と語るのは吉田信康税理士だ。
「まず、年収や家族構成により税控除を受けられる納税額(寄付金)の上限が異なります(図版・上表参照)。その範囲内であれば、自己負担分2000円を除き全額控除の形でお金が戻ってきます。さらに、自治体によっては、2000円以上の価値がありそうな特産品を送ってくれる。納税額(寄付金)が多ければ多いほど、特産品がいいものであったり、量が増えたりといったケースもあります」
2015年4月からは、その上限額が約2倍に引き上げられた。
「お金持ち優遇の構図に変わりありませんが、年収4、500万円の方も利用しやすくなりました」
また、条件を満たせば確定申告が不要なワンストップ特例(図版・下図参照)を選択することも可能になった。
「これを選択すると住民税のみから控除されますので、控除金額を実感しやすくなります。ただし、いまだに難解な用語がちりばめられた書類を寄付先の自治体に送付しなければならないのも事実。もっと手続きを簡略化する切り札として、マイナンバーには大いに期待しています」
今後、マイナンバーによって手続きがより簡素化し、使い勝手がよくなると期待される、ふるさと納税。しかも住民税が減ると聞けば、これを何かに活用できまいかと、知恵を巡らしたくなる人もいるだろう。たとえば、副業がバレる要因の一つが住民税。副業分も本業の会社の給与から天引きされるため、経理部などに気づかれてしまうわけだ。
もし、ふるさと納税によって副業分の住民税の額を減らせるなら、経理も気づきにくくなるのではないか。
「サラリーマンの場合、5月か6月ごろ給与明細と一緒に『住民税の決定通知書』を渡されます。そこには、ふるさと納税による控除額が明記してある。これは、確定した住民税から引かれる『税額控除』だからです。つまり控除前の住民税額は会社に筒抜け。残念ながら、副業がバレないようにする対策にはなりません」
税理士。野村証券に約8年間勤務の後、一念発起してゼロから税理士に。自らの脱サラ経験を生かし、数多くのベンチャー企業の独立開業を手掛けてきた。著書に年度版の『はじめてでもできる個人事業者・フリーランスの青色申告』シリーズなど。