「保育の質の維持向上」と「事業効率」の両立

「にじいろ」ブランドのサクセスHD(運営は子会社のサクセスアカデミー)は医療法人や大学病院、企業などが従業員のために開設した保育所の運営を受託しており、それら受託保育事業に加え、公的保育事業としている保育園・学童クラブの運営が経営の両輪だ。人材サービス事業が中心のライク(旧ジェイコムHD)傘下に入ったことで決算期が変更になっているが、15年度の売上高は117億円で、横浜市と練馬区からの収入が34億円、およそ30%を占める。ただし、受託保育事業と保育園・学童クラブ運営では、1施設当たりの売り上げ規模は大きく異なる。1施設1カ月平均の売上高は、受託保育事業は180万円、それに対して保育園・学童事業は3.5倍に迫る621万円だ。

1保育園の運営スタッフは、おおよそ従業員16人、パート7人である。保育園開業に投じる資金は、定員70人として1億2700万円規模である。

「コスモ」や「こっこる」ブランドの幼児活動研究会は、幼稚園・保育園の体育事業指導業がメインである。これには園の方針に沿う「正課」と、保育終了後に園の施設や用具を借用して任意での参加者を募る、いってみれば保育園におけるスポーツクラブともいうべき「課外」の2つからなる。課外の会員数は6万806人。売上高は42億円弱であることから、1会員1カ月約5700円の利用料金ということになる。

各社の収支を1万円の月謝にたとえてみよう。

JPHDは、ここ数年来、儲けは1万円につき800円台での推移である。本社の経費割合は減少傾向にあるが、保育現場の人件費などを計上している原価に大きな変動がないのが要因だろう。

サクセスHDは、JPHDと比較すると原価、経費とも1万円に占める割合が高く出ており、そのため儲けが少なくなっている。1万円につき275円の儲けは、営業利益率にすれば3%を割る。保育所受託運営事業の利益率が低いことが、背景にあるようだ。

幼児活動研究会は、保育料1万円につき儲けは1300円台での推移だ。自前の保育園ではなく契約保育園での体育指導が中心の比較的身軽な経営が、低い原価率・高い利益率となっていると推定される。

同社は、現場人件費や課外事業における園の施設借用料を原価に計上しているが、現場人件費は1万円につき約4600円、施設賃借料は1300円程度の計算になる。全体として7000円を切る原価は、JPHDやサクセスHDと大きく異なる点だ。

株式会社による保育園の運営は、一見すると相矛盾する「保育の質の維持向上」と「事業効率」の両立を求められる。保育士など人材の確保はもとより、認可保育園を開設するための不動産の確保も課題。将来的には子どもが減少していくという構造的な問題も抱えている。各社の経営の舵取りに注目したい!

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