学歴にこだわらない採用が登場してきた
偏差値の高い大学を出れば就職で優遇される時代が長く続いてきたが、最近では採用する企業の側も変化も起きている。
これまで多くの企業では、優秀だと評価する基準は大学の偏差値と「人柄」の大きく2つだ。偏差値の高い大学出身者は地頭力、つまり学習能力が高く、論理的思考力があると見なす。一方、人柄には協調性やチームワークなど組織の一員としての規律を守れるかどうかも含まれている。入社試験の一次面接では人事部ではなく、選ばれた一般の優秀な社員が行うことが多い。その際の評価基準としてよく言われるのが「一緒に仕事をしたいと思うか」であり、人柄の重要な部分を占めている。
だが、最近は必ずしもどんな大学を出たのかという学歴にこだわらない採用手法の多様化も進んでいる。大量採用する大手企業は就職サイトを通じて母集団を形成し、エントリーシートや面接を通じて機械的に絞り込んでいくパターンが多い。それに対して具体的な人材要件を提示して応募学生を絞り込み、複数の選考プロセスを通じて学生と濃密な関係を築きながらお互いのマッチング度合いを高める採用を行う企業も増えている。
たとえば新潟の三幸製菓は「おせんべいが好きか」「新潟で働けるか」という具体的要件を明示して募集。応募者は個人の特性とスキルを見る質問による適性検査を受けたあと、複数の選考方法を学生に選択させる手法をとっている。おせんべい好きをアピールするプレゼンや学生時代の勉強や研究成果を発表して評価する「ガリ勉採用」などがある。
また、ある大手百貨店のように「ファッションが好きな人」と要件を明確化して募集した企業もある。かつては東大、京大、慶大など高学歴人材を採用してきたが、「百貨店不況が続き、単に偏差値の高い大学の学生を採用しても業績低迷に歯止めはかからない。そうであるなら人材要件を明確にすることで、新たなビジネスの芽を生み出すような人材を採用しようと決めた」と人事部長は語る。
今では有名大学に限らず、それほど名前の知られていない大学の学生でもファッション好きな学生を採用している。せんべいが好き、ファッションが好き、というのはその企業のビジネスモデルに基づいた大事な人材要素なのだ。
大学の偏差値やコミュニケーション力などから導かれる「優秀な人間」ではなく、自社にとって本当に優秀な人材とは何かを明確に定義して選考しようという動きである。