トランプの素顔を熟知する側近から直接聞いた話を元に、政治マーケティングの視点よりその選挙戦略と大統領就任後の政策展開を予想する。
側近に聞く「トランプを語るに外せない3つのポイント」
2017年を展望しようとするとき、アメリカ合衆国第45代トランプ大統領の誕生は、国内外での最大級のニュースであるのと同時に、最大級に不透明で不確実な要因である。それは最大級のリターン要因でもあり、最大級のリスク要因でもあるだろう。
“泡沫”と揶揄されながら、最後に大方の予想を覆して大統領選挙に勝利したトランプに対して、多くの人達が、「どのような人物なのか」「選挙戦中の数々の暴言は企図したものなのか、それとも感情によるものなのか」「これからどのような政策をどのように実行していくのか」といった疑問をもっているのではないだろうか。
このような状況下で、私は2016年12月にトランプ次期政権移行チームのメンバーが来日した際に、トランプのことを側近として熟知している人物から直接話を聞く機会に恵まれた。
彼の名はピーター・フークストラ氏。次期政権移行チームメンバーであり、大統領選挙における安全保障での上級顧問。トランプが勝負のポイントであると睨み、勝利を言明したミシガン州における選挙対策委員長でもある。彼から直接聞いたトランプの人物像と戦略の要諦とは、以下の3点であった。
1)一流の国際的ビジネスマン(=トランプの本質)
2)ハードネゴシエーター(=トランプの差別化戦略)
3)交渉戦略×マーケティング戦略(=トランプの差別化戦略の要諦)
つまりは選挙戦勝利の背後には、トランプという人物を余すことなく生かし切った老獪で冷徹な戦略が周到に用意されていたというのだ。
この連載では、ピーター・フークストラ氏から直接聞いた“トランプ、3つのポイント”に対して、大統領選挙において活用された政治マーケティングの視点から、その戦略を読み解き、さらに大統領就任後の政策展開を予想する。
なお、分析にあたっては、米国内外の公表資料(特にギャラップ社、Per Research Center社の世論調査やU.S.Censusの統計データ)、出演TV番組、集会での演説、選挙戦でのディベート、公開情報に基づく人物像、トランプと直接交友のある複数の人物からの非公開情報に基づく人物像などの情報を材料とした。