ウエディングドレスデザイナーの先駆け、桂由美の半生が小説化された。手掛けたのは玉岡かおる氏だ。執筆に至ったのは、娘さんの結婚がきっかけだった。本人同士が自由に選びとって絆を結ぶ現在の結婚に、強く魅力を感じたという。

玉岡かおる(たまおか・かおる)
1956年、兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。87年『夢食い魚のブルー・グッドバイ』で神戸文学賞を受賞しデビュー。主な著書に『をんな紋』『天涯の船』『タカラジェンヌの太平洋戦争』。『お家さん』で第25回織田作之助賞を受賞。

桂由美に話を聞くことは、日本の婚礼の歴史を紐解くことにつながった。そして、書き上げてみて、日本の婚礼の歴史は、女性の自立の歴史だったことに気づいたという。

いまの女性は自由に婚礼様式や衣装を選ぶことができる。しかし、これは「当たり前」のことではない。過去には、選択肢がなく解放されなかった何千何万の女性がいる。「こうした前史の女性たちの生き方を知ることで、いまの時代がより輝くのではないか」、玉岡氏はそう考えている。主人公が何度もつぶやく「クリスタラン(フランス語で“輝かしい”)」の世界はまさに“いま”なのだ。現在、女性が働くことを後押しする動きが進んでいる。しかし、実は女性は昔から社会にかかわり、懸命に生きてきた。

「私の母は戦後、洋裁学校を経営し、1000人ほどの女性たちを教えていたと聞いています。主人公の一人、窓子の人生は母や、社会を支えた無数の女性をモチーフにして描いたものです」

窓子の家庭では、窓子が外に出て働き、夫が家事と子育てを担っていた。いまでこそ「主夫」と呼ばれて注目されているが、実はそうした家庭は昔から珍しくなかったのだ。

「性別で役割を固定させず、それぞれの個性を発揮して生きられる社会が、真のダイバーシティ。本書が、現代の自由と絆を際立たせ、読者の皆さんの幸せに向けて、背中を押してくれる作品になれば嬉しいです」

(佐藤 智=文 大槻純一=撮影)
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