正論だけでは人は付いてこない
たとえばLIXILグループ前社長の藤森義明は、自分とは異なる主張を持ち、しばしば意見が対立するような人材を好んで周囲に置く。GEのCEOだったジャック・ウェルチや、現CEOのジェフ・イメルトもそうである。イエスマンを重用しても、競争には勝てないと知っているからだ。
GEの会議で、インド出身の同僚と初めて激しく議論したときのことは忘れられない。私のプレゼンに正反対の意見を厳しい調子でぶつけてくる。この男は私のことを嫌いなんじゃないかと落ち込んだものだが、会議が終わったら、とたんに笑顔で語りかけてきた。
会社は仲良しクラブではなく、あくまでもビジネスの場。互いに馴れ合うのではなく、真剣に持論をぶつけ合うべきなのだ。
そして衆議一決したら、今度は「ビジネスに勝つ」という大目標をめざし、全員一丸となって戦い抜く。これをやり遂げる強さが、これからの社長には必要なのだ。
とはいっても、会社は多くの人で成り立っている。とくに当社のようなメーカーでは、特別なエリートではない普通の社員たちを納得させたうえで、一つの方向へ引っ張っていかなければならない。すると、正論を吐き、ハードワークを強いる「強さ」だけでは人は付いてこない。
だから社長には「チャーム」があることも大切だ。ゆきすぎるほどの情熱、スーパーな知性があるのに、人間的な魅力にあふれ、ほほえましい可愛げもある。そんな人がリーダーになると私は思うのである。
(構成=高井尚之 撮影=的野弘路)