3つめは、「決断には、51%のメリットと49%のデメリットがある」という、私が所属するリンクアンドモチベーションでよく言われる言葉だ。たとえば、メリット80%とデメリット20%の選択なら、誰も迷いはしない。70%と30%でも同じだろう。悩むということは、微差しかなく、どちらか決めかねる状態だという証拠だ。そこで、即決が難しければ「どちらを選んでもあまり変わらない」と判断すること。そのうえで、自分の直感を信じて決断し、51%のメリットを60%、70%に増やすためにできるだけ速く動き出すべきだ。この覚悟をともなった決断を、私は「強い決断」と呼んでいる。
とはいえ、実は私もプライベートでは優柔不断なタイプである。レストランではギリギリまでメニューを眺め、「もっといいものが見つかるかも」と新しい服も買えない。実際、若い頃は仕事でも決断を避ける傾向があった。そんな私を変えたのは、人事など仕事での決断経験の積み重ねである。決断とその結果を経験していくなかで、「この決断は間違っても影響力は小さい(だからさっさと決めてしまおう)」「これは影響力が大きいから、もう少し情報収集しよう」といった肌感覚は研ぎ澄まされ、スピードもアップした。
こう言っては何だが、たかが仕事だ。命まで取られることはないと腹をくくれば、どんな決断も「速く」「強く」下せるのではないだろうか。
(構成=大高志帆 撮影=加藤ゆき)