森山直太朗さん
1976年、東京都生まれ。2002年「乾いた唄は魚の餌にちょうどいい」でメジャーデビュー。稀有な歌唱力と独自の世界観を持つ楽曲で人気を集める。9月21日、デビュー15周年記念オールタイムベスト『大傑作撰』(ユニバーサルミュージック)を発売。来年1月より15周年アニバーサリーツアーを実施。
今年の10月でメジャーデビューして15年目になります。様々な経験を重ねてきたなかで、実は昨年の秋から今年の春まで、半年間ほど活動を小休止していました。
理由は、僕自身が音楽を続けていくことそのものを見つめ直す時期に来ていたから。もともと僕の場合、ツアーやレコーディングの最中でなければ、二週間くらいぽっかり予定が空くことはよくあるんです。でもこの半年間は、過ごす時間の質が全然違いましたね。
休みの間は、敢えて音楽から距離を置き、友達に会いに海外に出たり、憧れだった山小屋を買って自然の中で暮らしてみたり。それにも飽きてついに手持ち無沙汰になって、「そもそも、何が楽しくて音楽をやっていたんだっけ?」。そんな原点の気持ちに返ることができたように思います。
そう考えると、休むのも仕事の一環。というのも、舞台の表現では、その場の瞬発力でこなせることと、人としてどんなプロセスを経て、いかに生きてきたかということが、密接に交わっていると思うんです。聴く人も、本当はそういう目に見えない部分を感じ取っているはずだし、何より音楽が怠惰を許してくれない。それはきっと、どんな職業にも共通する部分があるんじゃないかな。
僕にとっては、大切な店に行って食事をすることも豊かな人生のために欠かせないひとときです。「クリスチアノ」は、折に触れ訪れている店。活動小休止前にも一度行きました。ここは、異国の地みたいな雰囲気が味わえるんです。
でも、こういう人気店に何日も前から予約して行くのは、勝負に負けた気がしてやりたくない(笑)。たまたま空席のあるタイミングに滑り込むのが理想です。四回に三回はフラれますが、僕はメンタルが強いから全然気にしません。
「一楓」は、駅前から少し奥まった所にある和食やさん。個室があって、貸し切り感満載なんです。打ち上げとか、誰かのお祝い事とか、ゆっくり食事を楽しみたいときに利用しています。
「クリスチアノ」にせよ、「一楓」にせよ、閑静な代々木エリアのなかでもさらに裏通りの立地。それって、よほど味とスタイルに自信がないとできないと思う。美味しいだけじゃなくて、そんな“志”みたいなものが、佇まいの細部から感じ取れるところが好きですね。
ここに来ないと食べられない味があって、ほかでは代わりが利かない路地裏の店。僕も歌い手としてそんな存在になりたいです。