人の力では解決不能な難問に突き当たったら……

(1)『ソクラテスの弁明・クリトン』 プラトン・著 講談社学術文庫
…告発された70歳のソクラテスが法廷で無罪を主張。その模様を冷静に描く。文学作品としても評価が高い。
(2)『プロタゴラス』 プラトン・著 岩波文庫
…他人に徳を教えることはできるのか。当時の大物知識人にソクラテスが議論を挑む。質問を重ねることで論破していくさまを活写した。
(3)『ニコマコス倫理学』 アリストテレス・著 岩波文庫
…正義とは、友情とは、勇気とは何か。ソクラテスから続く哲学上の問題を解決。難解とされるアリストテレスの中ではわかりやすい。
(4)『方法序説』 デカルト・著 岩波文庫
…「われ思う、ゆえにわれあり」が絶対確実な出発点だと宣言し、近代精神を確立。ラテン語ではなく通俗語のフランス語で書かれた。
(5)『分析哲学入門』 ジョン・ホスパーズ・著 法政大学出版局
…土屋教授が学生に勧める代表的入門書。意味論、認識論、科学哲学、形而上学、倫理学の5分冊。どの巻から読み始めてもかまわない。
(6)『ウィトゲンシュタインのパラドックス』 クリプキ・著 産業図書
…哲学の最前線で何が議論されているかを知るには最適の本。世界の哲学者がこの本を読んで刮目した。
(7)『「哲学的探求」読解』 ウィトゲンシュタイン・著 産業図書
…土屋教授も「何度も読んだが40歳近くになるまで理解できなかった」というウィトゲンシュタイン後期の著作。詳細な解説つき。
(8)『日常言語の論理学』 オールウドほか・著 産業図書
…専門的な論理式を満載した本から柔らかく解説した本まで、論理学の入門書はバリエーションが豊富。バランスが取れているのが本書。
(9)『模型は心を持ちうるか』 ブライテンベルク・著 哲学書房
…センサーとモーターだけの簡単な模型が「心」を持つかのように行動する。人間の心とは何かを考えさせる。
(10)『哲学の歴史 第11巻』 飯田 隆・責任編集 中央公論新社
…現在の主流である分析哲学に関して解説。副題どおり「論理・数学・言語」を柱としている。エピソード多数。
(11)『ツチヤ教授の哲学講義』 土屋賢二・著 岩波書店
…「学会の標準的な考え方とは違うところもある」と断りつつ大哲学者を批判。柔らかい講義口調で説く。
(12)『無限論の教室』 野矢茂樹・著 講談社現代新書
…さる大学の哲学教授がたった2人の学生に対して講義を行う。テーマは「無限とは何か」。平易な用語とたとえを使い、クリアに説く。
(13)『われ笑う、ゆえにわれあり』 土屋賢二・著 文春文庫
…哲学の問題には単なる言葉への誤解が隠れている。そのことに気づかせてくれるナンセンス・エッセイの最高峰。
(14)『不思議の国のアリス』 ルイス・キャロル・著 新潮文庫
…「日本にはもっとナンセンスを味わう文化が必要」と土屋教授は嘆く。英国ナンセンス・ファンタジーの名作。
(15)『悪霊』 ドストエフスキー・著 新潮文庫
…価値観転倒をもたらす 傑作「すべての価値観を疑うところから出発するのが哲学。ふつうの哲学書より哲学的意味合いが大きい」。

(大塚常好=構成 岡本 凛=撮影)